2009年5月19日 コミュニティ・つながり
中原まりさん講演会
本日は建築アーキヴィストの中原まりさんの講演会に出席してきました。東京電機大学未来科学部建築学科の公開講座で、テーマは「Information Literacy and Ardhitecture(情報活用能力と建築デザイン)」です。まりさんは9年前にコロンビア大学のサマーセミナー(CJSSEP)に参加した際に現地コーディネイトとして、いろいろとお世話になった方です。現在はワシントンに在住し、米国議会図書館の司書をされています。日本における建築アーカイブの第一人者です。
本日出席できなかった仲間から「講演会の内容のレポートをして」と要望を受けていますので、簡単に講義内容を紹介します。
まずまりさんが建築アーキヴィストになるまでのバックグラウンドのお話がありました。大学で幾何学構成論を学ぶ過程で、マッキム・ミード&ホワイトのロウ・ライブラリーの図面の原図に出会い、なぜか涙を流した頃から「建築資料の保管と研究」の重要性を考えるようになったそうです。
実際に建築アーカイブの仕事となると建築資料の保管と研究になりますが、この建築資料をどうやって整理保管するのかの話になりました。未整理状態の膨大なDataは、ある意味のある分類をすることでInformationになります。この分類方法はいろいろあって、たとえば「建築家名」であったり、「建物名」であったり、「建設場所」だったりします。このInformationを使用する能力が加わることで、この情報はKnowledgeになり、この知識の集積と経験からWisdomになるということでした。
分かりやすいデジタルアーカイブの例をいくつかご紹介いただきました。その一つにスカイスクレーパーミュージアムのVIVAというデジタルアーカイブがあり、これはまりさんが資料のスキャニングの作業を行ったそうです。スキャニングと言っても、ただスキャナーでスキャンするだけでなく、その資料(図面だったり、写真だったり)の情報を集めて整理する時間がとてつもなくかかり、大変な作業だそうです。Flickr Pilot Projectという事例をあげ、ウィキペディアのように、提供された資料に利用者が情報を重ねて蓄積していく方法をご紹介されました。たとえば古いマンハッタンの写真に対して、アーカイブ担当者が「撮影日1872年?」と掲載しておくと、利用者側から「後方に写っている建設中のビルは○○年の竣工なので、この写真は○○年より以前に撮影されたものだろう」という風に情報が集まり、その資料のバックグラウンドが明確になっていくとのことです。
このように「利用者が情報を与える」= [Interactive Comunication] が大切だということです。
日本の建築アーカイブが進まない理由として、「寄付に対する免税(減税)」のメリットが存在しないということでした。アメリカでは企業や個人が自分の保有資料を学術団体や公共に寄付をするとその内容をきちんと金額として価値換算してその分の税金が免除されたりするそうです。
最後に建築を志す若者(学生)に対しての言葉がありました。「今は情報が溢れてしまっている時代だけど、この情報に負けることなく、どうやって料理するのかしっかり勉強しなさい。まずは先生の言うことを実践してみなさい。あるときは自分が除外した情報にも目を向けてみるとよい。何も無駄だったことなどない。とにかく努力しなさい。」と、ほとんど根性論でした。まりさんらしいです。
ちなみにまりさんは海外生活が長いこともあって、パワーポイントでミスクリックした際に出る言葉は、「oops(ウープス)」でした。
講演会が終わった後の懇親会でサプライズ発表がありました。なんとご結婚されるそうです。お相手はレアブックの修復技術者のジョンさんです。ワシントンの同じアパートに住んでいたのが縁だそうです。末永くお幸せに。
最後に懐かしいのでまりさんにコーディネイトしていただいて、訪問したグラスハウスでの集合写真を載せておきます。まりさん、若いです。
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