2010年6月10日 学習・研鑽
米国住宅産業研修 第四日目
米国住宅産業研修もいよいよ後半戦です。
本日はオレゴン州セーラム市の住宅安全検査局の責任者であるTom J. Phillips氏から、インスペクト(公的現場検査)のシステムについて講義いただきました。昨日、レジェンドホームズの現場で実際のインスペクター(検査官)に実際の現場でのインスペクトの方法と詳細をお伺いしましたが、本日はそのインスペクターを管理する責任者からインスペクトの仕組みをお伺いしました。
最初に建築基準の歴史を伺いました。世界で最初の建築基準法はあのハムラビ法典に記述があるそうです。その内容は「建物が壊れて人が死ねば、建物を建てた人は死刑」というとてもシンプルな内容だったようです。シンプルですが的確です。
その後、アメリカではシカゴの大火災などの災害が起きるたびに基準が見直され、1927年に西海岸をカバーする建築基準が出来たそうです。日本の市街地建築物法のほうが早いですね。その後、3つの団体がそれぞれ策定した3つのコード(基準)を1994年にひとつにまとめて有名なICC(International Code Conference)が出来たそうです。この基準は以前に携わったフォーシーズンズホテルやリッツカールトンホテルの設計の際には、お馴染みのものです。このコードを理解するのに苦労したことが思い出されます。
アメリカの建築基準は、州ごとに違っています。ICCで定めた基準が一番厳しくて、各州ごとにICCのどの部分を運用するか州ごとの基準があります。オレゴン州にもOregon Building Codeがあります。最近、住宅にもスプリンクラーの設置の基準が定められたそうですが、オレゴン州ではこの基準の採択を見送ったそうです。
インスペクターになるには厳しい講習と研修、試験が必要だそうです。特に商業建築系の電気・配管設備の検査官は4年間学校に通って、テストにパスしないとインスペクターになれないそうです。
調査の内容は(1)基礎(コンクリート打設前)、(2)水道、ガス、電気+床、(3)水害の可能性の判断、(4)耐震壁と筋交い、(5)電気と配管、(6)フレーミングと左官、(7)保険調査、(8)耐火壁(長屋の場合)、(9)最終検査 だそうです。(聞き取りが間違ってたらごめんなさい)
セーラム市でのインスペクトの取り組みについて説明がありました。セーラム市はビルダー(工務店)の人たちがお客さんなので、お客さんにメリットがあるよう、お客さんの話を聞いて改善しているそうです。例えば、Money Back Garanteeというのがあって、図面審査を提出を受けてから、10日間で出来なければ、検査費用を全額返金するそうです。「期日までに審査できない旨の通知」が出されるだけの日本とはえらい違いです。これは確認申請の審査期間がはっきりすれば、その後のビルダーがスケジュールを立てやすいだろうという配慮からなされているそうです。また昔は申請図面がきちんと準備されないままに提出するビルダーが多く、審査に苦労したそうで、「ちゃんと図面を出せば、こちらもきちんと審査するよ」という意味もあるそうです。ちなみにこの制度はセーラム市だけのサービスだそうです。昨日のJohn氏はワシントン州は2ヵ月半かかると言ってました。
午前中の講義は以上で、お昼は香港式飲茶のお店に伺いました。
皆、おあづけです。
さあ、食べるぞ!
午後からは、材木屋さんのPPR Lumber社のヤードにお伺いしました。
材木屋さんと言っても、建材のほとんどを扱っています。
住宅部門セールスのTami Baker氏から、Take Offについてお伺いしました。このテイクオフというのは、日本で言う「木拾い」の意味で、使用する材料の数を数える作業です。昨日お伺いしたレジェンドホームズの担当でもあるそうで、レジェンドホームから送られてきた図面を元に、タミさんが木拾いして、指定の時間と場所にデリバリーするそうです。ビルダーが木拾いするのでなく、建材屋さんが行っているとのこと。レジェンドホームズは大きい会社なので、サッシなどは含まれないけど、大抵はお風呂や洗面器以外のほとんどすべての建築材料は、建材屋さんが木拾いして、現場に搬入するそうです。道理で、昨日のレジェンドホームズの大きな現場のマネージャー(現場監督)がたった一人で行っているのが分かりました。2×4のシンプルな作り方ゆえ、このように誰が拾っても同じ結果になるのですね。似たような設計図(昨日書いたブループリント(市販の既成図面))を使って、同じような材料を使って、誰が作っても同じで、短工期で仕上げるのだから、どの家も似たような家になっていることもうなずけます。
説明の後は、ヤードの中を見せていただきました。まるでホームセンターです。
窓も売ってます。
構造金物です。
でっかいホールダウン金物です。一体何トンの金物なのでしょう?
あれ?、鈴木委員長の具合が悪そうです。昨晩はお店をハシゴしたそうです。
組み立て式のパネルソーです。これならそれほど高くないのでは?欲しいな~。残念ながら売り物ではなかったです。
このトラックでデリバリーしているそうです。
トラックの後ろを見ると、なんだか変です。何かぶら下がっています。
何と、フォークリフトが付いています。現場へのデリバリーにはフォークリフトごと行って、フォークリフトで現場に荷卸しするそうです。通常ひとつの現場に5回デリバリーするそうです。一回の配達の量が多いのです。
梁の集成材のストックヤードです。なんと20mだそうです。日本では運べません。
床を支えるトラスビームです。これも20mの材料から切り出すそうです。
アメリカの建築コストが日本に比べて割安な意味がよく分かりました。大量生産、大量消費なのです。
続いて、大型ホームセンターのThe Home Depotに伺いました。DIYだけでなく、小さなビルダーはここで建材を仕入れるそうです。価格も日本に比べると格段に安いです。
ひっ広いです。天井も高いです。
電気設備も完全にプロ用のものです。日本なら関電工の人しか扱わないようなものまで置いています。
シンクが安い、、。20ドルでステンレスシンクが買えます。沖社長が昔ポートランドに来た際に、たくさんシンクを購入したそうで、下小屋にたくさんあったことを思い出しました。
サッシ、扉、ユニットバス、便器などあらゆるものが売られています。昨日、住宅の現場をみて、本日ここに来たことでひとつ分かりました。「アメリカの住宅はDIYの延長上にある」ということです。
せっかくホームデポに来たので、いろいろと買い込んでしまいました。カッコいいスイッチ、現場のお客さん用のヘルメット、現場用救急セット、家の作り方のハウツー本、ボードキャリア用グッズなどなどです。
夜は、日本食です。毎日の暴飲暴食で疲れた胃には助かります。
鈴木委員長も元気になりました。
マスターは日本人です。
早川さんからお楽しみプレゼントがありました。
くじを引いて、順番にプレゼントの袋を選んで開封します。後から選ぶ人は、既に前の人がゲットしたプレゼントで気に入ったものがあれば、それを奪ってもよいというルールです。楽しいルールです。
お料理は、オレゴン風創作日本料理です。アボガド焼きです。
寿司です。とてもおいしかったです。
さあ、明日は講習の最終日です。がんばるぞ!
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