2020年6月29日 竣工後・メンテナンス・検査

壁体内結露の危険性

2年前に改修工事を行ったお家のお話です。築30年ですが、結果として「解体するしかない」との判断に至ったものです。

当時はブログに書くことが出来ない内容でしたので、封印していましたが、2年経ったので、注意喚起としてブログとしてまとめたいと思います。

 

きっかけは「築15年の当時の売り建て住宅を15年前に購入したのだけど、雨漏りが止まらない」との連絡を頂いたことからでした。

以前から雨漏りしていたとのことで、リフォーム業者に何度も依頼をしてきたけど「雨漏りが止まらない」とのことで、弊社を見つけていらっしゃいました。

 

南東の和室の角で雨漏りをしているとのことで、壁の一部を剥がし調査しました。雨水の侵入個所は、窓周りや壁のクラックなど複数要因に寄るものでした。

 

「雨漏りの原因を改善し、壁を補修して終わり」であればよかったのですが、そう簡単なものではありませんでした。外壁を剥がしてみるとシロアリの害が見られました。そのまま外壁を設置して見て見ぬ振りも出来ませんので、シロアリ害の範囲を調査することになりました。南東の角から、東側の壁を剥がしていくと、2階の梁部分にシロアリ害があり、これが北方向へと続いていました。

 

梁だけでなく当然ですが、柱も食べられてしまっていました。

 

耐震性能上大事な筋交いも食べられてしまっていました。

 

柱や梁はかなり深いところまで食害が進んでいました。

 

梁の食害の深さを測ってみました。

 

梁は、幅が105mmの材が使用されていましたが、40mmほど食べられてしまっていました。半分近く無くなっている状態です。

 

一番被害の大きな部分は、「雨漏りが止まらない」とされていた南東の角の柱部分です。

 

足元の部分は、食べ尽くされてしまって、何もない状態になってしまいました。

 

そして、基礎とつながる土台もなにもない状態になってしまっていました。

 

想像以上に範囲が広いものでした。東側だけでなく、北側、西側、南側の梁や土台も被害を受けていました。

 

 

断熱材はカビで真っ黒です。もともとは黄色いグラスウール断熱材です。

 

基礎と外壁との間には、通常であれば壁体内に入った水を排出する水切りがあるのですが、なぜかコーキングで蓋をされてしまっていました。被害を悪化させた原因の一つはこれです。雨漏りがあるので、リフォーム業者に対策を依頼したのだけど、原因を特定できず、「とりあえずこれで様子を見て下さい」的なことをしたものと思われます。壁体内に入った雨水を排出するための大事な出口なのですが、ここを塞いでしまっては、雨水が土台に吸われてしまって、土台が湿潤状態となり、シロアリが好む環境となってしまいます。

 

お客様にお話をお伺いしたところ、15年前に中古で築15年の住宅を購入し引っ越してきたとのこと。冬の寒さが厳しかったとのことで、寒いのが苦手なご家族だったので、リビングダイニングだけでなく、各個室や洗面所などにも石油ストーブやガスストーブを置いて過ごしてきてとのことでした。

 

原因は、そのストーブであると思われます。石油ストーブやガスストーブは、「開放型暖房機器」と呼ばれ、燃焼時に水分を放出します。

 

断熱気密と防湿がしっかりとされていれば、窓面で結露することになりますが、30年前ではそのような知識も技術も無く、特に建売住宅はそれなりの断熱性能となっていたと思われます。

 

各部屋に置かれた開放型のストーブから大量の水蒸気が供給され、壁体内に入ってしまい、壁体内結露が生じていたようです。

 

壁体内結露とは、壁に入った水蒸気が断熱材を通り越し、外壁下地の部分で結露を起こすものです。ここで結露した水は、壁面を伝い、土台を濡らします。湿潤状態となった土台はシロアリにとってはご馳走となってしまいます。1階部分でこの現象が起こることが多いのですが、このお家では2階でも開放型ストーブを大量に使用していたため、2階の梁でも同じような湿潤状態となり、そこに雨漏りで巣食っていたシロアリが横へ移動したものと思われます。

 

 

「雨漏りは放置してはいけない」「開放型暖房器具を使用してはいけない」「補修は知識をもった人に依頼しないといけない」など、注意事項が盛りだくさんです。

 

被害の害の範囲を調査した結果、写真にある部分だけでなく、家の全周の梁と柱に被害が広がっていました。特に雨漏りの進入場所であった南東角の周辺は、柱も筋交いも無い状態でしたので、小さな地震でも倒壊の可能性があるという状態でした。補修工事をするにも、範囲が家全体に及ぶため、建替えと同じくらいの費用がかかるものでした。

 

お住まいのお客様は大変ショックを受けていらっしゃいました。住宅ローンもまだ残っている状態であり、まだ就学中のお子様もいらしゃいました。

 

しかし、このまま住み続けることは大変危険であることをお伝えし、この家を売却するご決断をされました。

 

結果的にはお客様は「地震が起きて、家族の身に何か起こる前でよかった」と言って頂きました。

 

壁体内結露は本当に危険です。雨漏りも絶対に放置してはいけません。

 

開放型ストーブをお使いの方はくれぐれもお気を付けください。

 

 

 



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