2021年1月19日 コミュニティ・つながり

工務店編集会議 第一回

昨年末にもブログに書きましたが、「工務店編集会議」が始まりました。

”工務店で家を建てる”を当たり前にするための「本と動画」をつくるプロジェクトです。「工務店編集会議」の詳細についてはこちら
https://korekara-maps.jp/2584/

 

オンラインで定期的に編集会議を行い、その編集過程をyoutubeで配信するのですが、その1回目の会議が本日開催されました。第1回目となる本日は、松村秀一先生(東京大学特任教授)にご参加いただき、戦後の日本の住宅の変遷について「3つの民主化」というテーマで講演いただきました。

松村先生とは月に一度、ZOOMで飲み会をご一緒させていただいています。その飲み会の中で、戦後の日本の住宅の変遷の話になることがよくあるのですが、松村先生からは今まで聞いたこともないようなお話を毎度お伺いしておりました。

ある意味「ハウスメーカーがライバル」とも言える工務店ですので、相手のことをよく知らなければなりません。そこで、オーガニックスタジオ新潟の相模社長の発案で、記念すべき第一回目の講演は「ハウスメーカーのことを知ろう」ということになり、このあたりの見識が深い松村先生にご登壇いただくことになりました。

 

本日は、松村先生に「ひらかれる建築-「民主化」の作法-」というテーマでお話しいただきました。

 

第一部は「建築の近代 -第1世代の民主化-」のお話で、ハウスメーカーの誕生秘話的な話でした。昔の映画の「君みたいなお嬢さんは量産されるべきだ」というセリフを引用され、これがまさにハウスメーカーつまり住宅の量産化の概念とのこと。戦後、復興を遂げていく過程で、都市部に大量の住宅を供給する必要があり、国策として量産住宅が作られました。

 

第二部は「建築の脱近代 -第2世代の民主化-」のお話。ハウスメーカーによる住宅の量産化の成功により、戦後の日本に大量の住宅を供給することは出来たのですが、その成長にも限界が感じられるようになり、民家などヴァナキュラーなものに再注目されるようになり、建築家も大工や職人との共同により、本質を見つめる時代になっていったとのこと。以前のブログにも書きましたが、「箱の産業」ともいえるハウスメーカーの家づくりへの疑問が生じてきた時代です。まさに建築系同人誌の「群居」の執筆者が見つめていた世界です。時代は豊かになり、選択肢が増え、何がよいのかを考えるようになった時代。

 

第三部は「そして今 -第3世代の民主化へ-」のお話で、十分に供給がなされ、選択肢も豊富にあり、いろいろなもののストック化が為された中で、建物・知識・技術の十分なストックを今後にどう生かしていくかという時代。もちろん現在の話です。経済成長期のステレオタイプとは異なる「人の生き方」の実現に必要な構想力が問われる時代とのこと。若い人は「高品質低空飛行」という生き方を求めるようにもなり、これまでの価値観では図ることが出来ない時代ですので、今あるストックをどうやって利用していくかを考えていかなければならなくなっています。つまり「箱」つくりから脱却し、「場」つくりを行っていかなければならないということ。「まちに暮らしと仕事の未来を埋め込むこと」を行っていくことが、我々設計者や施工者が行っていくことであり、今後は建築を取巻く分野の「しごと」は大きく広がっていくとのことでした。

 

講演後は、オーガニックスタジオ新潟の相模社長と私がパネラーとなり、松村先生にいろいろとお話をお伺いしました。講演の内容から、これまでの日本の住宅事情とその理由(裏話)、そして今後の家づくりの在るべき姿など、広くお話をお伺いいたしました。

第一回目として、とても充実した編集会議となったのではないかと思います。

 

第二回目は2月19日(金)の予定です。私も一コマ講義を持ちます。私からは「住宅に求める性能と依頼先の選び方」という感じの話をさせていただく予定です。

 

編集会議後は、編集部員、編集協力委員の皆様と情報交換を行いました。

今後も有益なコンテンツを蓄積して、秋の書籍の出版の準備を進めていきたいと思います。



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