2024年9月4日 学習・研鑽
北欧ツアー報告5日目
北欧ツアー五日目の朝。
ホテルは変われど、朝食の内容はほとんど同じ。
朝早々から、霧の中のユバスキュラ大学を見学。
アアルトの赤の時代の代表作とも言える建築群があります。
開館前にちょっと建物の周りを歩くだけで、キュンキュンします。
雨の道がデザインされています。
アアルト特有のトップライト。
講義ホールのエントランス。
開き戸の吊り金物にキュン。
ホールの床の大理石の模様が来場者の誘導サインになっています。
二階に続く階段。
階段のディテールに興味津々。
ちょっとした待合のスペースにもアルテックの椅子とテーブル。
カフェテリア。
松の森の中と言う立地を活かして、建物内部でも森の中に居ることを感じさせる意図があるとのこと。
講義ホールと図書館の間にあるホワイエ。
受付のカウンターにもしっかりとディテール設計があります。
図書館へ。
図書館も谷の中の斜面に書架があって一目で目的書物がどこにあるか分かりやすく配置しているとのこと。
しかし司書の方にとっては書物を元に戻すのが重労働になってしまうそうです。
アアルト設計の建物を実際に使っている人にとっては、高低差があったりしてとっても使いにくいそうです。(^^;;
図書館外部へ出て来ました。
フィンランドでは、当たり前の交通手段となっている電動キックボード。
大学内の移動にも使われているようです。
学生会館に。
通りがかりの女性が見学している私達に「アアルト見にきたの?実用的な設計はしてないのよ」と話しかけてきました。(^^;
カフェテリアの屋根の架構にキュンキュン。
豊かな空間での食事は美味しいことでしょう。
カフェテリアの中庭。
雨樋が半分オープンになっています。
アアルトはどの建物も雨の道をしっかりとデザインしていることが分かります。
大学内にはアアルト以前の古い建物とアアルト時代の1950〜1970年代、そして近代と3つの時代の建物があります。
アアルトは敷地内に6つの建物を設計していますが、アアルトとしては古い建物は壊して建て替えたかったそうです。
昨日訪問した夏の家に近いセイナッツァロの街に移動。
ここではアアルトの代表作の一つ「セイナッツァロの役場」を拝見。
4mの盛り土で盛られた中庭を中心に町役場の機能の議場、会議室、レストラン、図書館、宿泊室が中庭を囲い込むように計画されています。
1階には路面店も配置されています。
今も美容院や本屋が営業しています。
窓に設けられた木製ルーバー。
ここは階段ではなく、高低差を解消するための単なる斜面。
4m上がったところにある中庭。
この建物の内部には宿泊施設があります。
3つのゲストルームがあるとのことなので、次回訪問時には是非宿泊してみたいです。
ホールの前に這ったツタの内側。
正面の階段はかなり緩やかです。
建物内部へ。
高さ関係も天井の低いところから徐々に高くして、自然と高さに慣れさせる仕掛けも。
床面もレンガと大理石を張り分けて、誘導サインを兼ねていました。
先ほどのツタを内側から見ました。
明るさを確保しつつ、窓のシェードとして、日差しと目線を巧みに遮蔽していました。
宿泊棟に続く廊下。
レンガで出来たベンチ?
町役場と言う権威的な建物ではなく、住宅の延長上のヒューマンスケールで設計されていました。
森の中に位置していることも表現された模型。
床材は素朴な仕上げのレンガ。
二階の議場に上がるための階段。
かなり緩やかです。
村議会議場へ。
この屋根の架構も有名です。
議長の顔が明るくなるように、議長席のライトだけが少し加工されていました。
外光が直接入り込まないように斜めに設置した木製ルーバーが取り付けられていました。
ちょっとしたベンチも座りやすさを考えた形状に。
図書室は改修工事が終わったばかりで、オリジナルに忠実にしつつ、現代のニーズに合わせて改修されていました。
床のパイン材は新しいものではなく、サンディングしてキレイにしたものとのこと。
無垢材ならではです。
緻密にデザインがされていて、建築の教科書みたいな建物でした。
ユバスキュラからセイナヨキに移動するバスからの車窓。
こんな景色が延々と続きます。
移動途中にある「ペタヤヴェシの古い教会」に立ち寄りました。
バスが近くまで寄れないとのことで、少し歩くとこんな景色。
心が洗わるようです。
この景色を見るためだけにここに来たいと思わせる景色。
ユネスコの世界遺産に登録されている木造教会です。
地元で採れる松をふんだんに使って造られています。
こんな場所。
松の板で出来た瓦。
木製の窓も年季を感じます。
通用口の階段も大胆なディテール。
今も使われている鍵。
かなり大きい。
今も現役の鍵穴。
あおり止めも当時のまま。
鐘楼への入り口。
ペイントも当時のオリジナルのままとのこと。
加工機械が無かった時代のものなので、床板はかなり荒々しい仕上がり。
260年前の1764年に造られたもので、梁や壁に施工時期がペイントされています。
天井面には、当時の大工たちのイニシャルが刻まれています。
住民が多くなり収容できなくなり、1879年に近くに新しい教会を建てたので、ここは100年以上使われてこなかったとのこと。
そのために改修されることなく、当時のオリジナルのままで維持されていたこともあり、ユネスコの文化遺産に認定されたとのこと。
鍛冶屋さんが丁寧に作った金物類。
ワインを貯蔵するための床下収納。
教会脇の湖の湖面は、私の心のように澄み切っていて鏡のよう。(^^;;
セイナヨキまでは道のりは遠い。
お昼ご飯は途中のガソリンスタンド併設の道の駅みたいな施設で頂きました。
お昼ご飯はホットドッグ。
夕方にセイナヨキに到着。
アアルトの功績が大きい街です。
アアルトの設計した建物が密集している地域は「アアルトセンター」と呼ばれ市民に愛されています。
アアルトセンターには、アアルトが設計した6つの建物があります。
発注者はぞれぞれ違うのですが、建て方は違えど、街に調和するように建てられています。
最初に拝見したのは「セイナヨキ市庁舎(1961–1962)」。
アラビアで焼かれた外壁のタイルは濃いブルーですが、天気によっては黒色にも見えます。
周辺の外構はあいにく改修工事中でした。
室内は、照明器具が各所で変えてあり、照明器具の展示場のよう。
議場のペンダントは議長席の上だけランプが変えられていました。
傾斜のある中庭は残念ながら工事中。
レンガの白ぬり壁と、窓周りの木部の水平ラインが上品にデザインされていることが分かります。
これは勉強になります。
セイナヨキ市町舎に続いて拝見したのは、「セイナヨキ市立劇場(1986–1987)」。
演劇舞台専用の劇場です。
フィンランドは演劇が盛んなんだそうで、市民劇団も多いとのこと。
こちらも照明と家具の展示場と言っていいくらいのランプと椅子がありました。
ホールにはLレッグ、Xレッグの製作途中の模型とそして完成品も飾られていました。
真鍮の手すりに真鍮の巾木。
出隅、入隅のディテールにキュンキュンしてました。
壁付けの照明器具もしっかりとデザイン。
演劇専用のホール。
セイナヨキ市立劇場の後に拝見したのは、アアルトセンターのシンボルともいえる「ラケウデンリスティ教会(1957–1960)」
名前の「Lakeuden Risti」とは、フィンランド語で「平原の中の十字架」という意味だそうです。
外壁はアアルトの白の時代の定番であるレンガ積に白漆喰塗りですが、アアルトは本当は黒花崗岩で仕上げたかったそうです。
予算の関係で、黒ではなく白になった訳ですが、この時計塔が黒だったらどんな風に見えたのだろうか。
パイプオルガンもアアルトに設計依頼があり、設計したそうです。
現場でパイプオルガンが目立つように前に張り出して設置させたとのこと。
ペンダントライトの向きに注目。
入り口側と祭壇側からで光が違います。
ペンダントライトには、参列者には眩しくない向きにルーバーが向けられていました。
床暖房の吹き出し口。
祭壇の左側には耳みたいな形の彫刻があります。
天使の羽だそうです。
ラハティの教会に対の片方があるとのこと。
写真で見ていたラハティの教会の祭壇の左側にある反響版みたいなものは、天使の羽の対だったのか!
これを知り、ラハティの教会に無性に行ってみたくなってしまいました。
小さな礼拝堂には川をイメージしたステンドグラス。
時計塔の脇には、アアルトがデザインした噴水彫刻もありました。
鳩がデザインされています。
パイプオルガンでも噴水でもなんでもござれ
ラケウデンリスティ教会に続き、拝見したのは「セイナヨキ市立図書館(1964–1965)」。
高い窓と窓外に設置されたルーバーによって柔らかい光が室内に差し込みます。
こちらも家具と照明器具の展示場のよう。
最小限の読書スペースでも、斜向かいの人の目線が気にならないような位置に照明器具が配置されていました。
この照明器具はクラゲがモチーフではなく、カブがモチーフです。(^^)
柱を避けてカウンターが引っ込んでいるのも、機能的かつ意匠的で勉強になります。
床のフローリングの貼り方は、大工さん泣かせ。
話で聞いていたブルーベリーランプも初めて見ました。
子供用の図書館もしっかりと拝見。
汎用品となっている真鍮の引手。
上下に同じものを設置することで、大人も子供も使えます。
このディテールはアアルト作品に共通しています。
通用口の風除室上部のファン。
こんなところの写真撮る人は業界の人だけでしょうね。
アアルトセンターで最後に拝見したのが「アピラ図書館(2012)」。
アアルトの設計ではなく、ヘルシンキの設計事務所JKMM Architectsによる設計です。
アアルトの市立図書館とは、地下通路でつながっています。
上から見ると三つ葉のクローバーの形状をしていて、日本の折り紙からインスピレーションを得ているとのこと。
閲覧室の大きなDPG窓の先には、ラケウデンリスティ教会が見えます。
イベントも出来る大きな閲覧ホール。
階段上の客席のソファは動かすことが出来ます。
幾何学的な内部構成。
この右側の壁に隠し扉があり、学習室に繋がっています。
学習室の様子。
子供用図書スペースは、本を読みたくなる家具や仕掛けがいろいろ。
絵本のテーマがそのまま家具になっているとのこと。
メディア視聴室や静かに勉強できるスタディルームなどもあり、一日中居ても飽きさせない空間となっていました。
CDやDVDだけでなく、漫画もゲーム機も貸し出すとのこと。
冬が長い国だけあって、家の中に居ることも多いからなのでしょうか。
メディアコーナーの閲覧場所は、子供たちにも大人気。
私も入ってみました。
避難口を下から見たところ。
この左側からアアルト図書館に地下で繋がっています。
本日の見学は終了。
ホテルに戻ってサウナに。
サウナの外気浴場からは、ラケウデンリスティ教会が見えました。
さらに北に来たので夜の9時半だと言うのにまだまだ明るい。
食後にアアルトの軍需博物館を外からチラリズム。
アアルトの初期の作品。
夜のアアルトセンターを散策。
一昨晩のユバスキュラの夜のBARで、お揃いのツナギを着ている学生が騒いでいました。
赤や白やおそろいのツナギで、皆なんだか楽しそう。
日本でいうところの暴走族の特攻服なのかと思ってみていると、そんなに悪そうな風貌はしていません。
男の子も女の子も真面目そうな感じの子が着ていました。
ワッペンがたくさん付いていて、運動部のユニフォームなのかなっと思っていました。
今晩も付近の公園で同じ服装をした人たちが!
「えっ?ユバスキュラからセイナヨキに私たちと一緒に移動している?!」と思って、学生の一人に聞いてみたら「大学のパーティがあって、これからうんちゃらかんちゃら」って言ってました。
よく聞き取れなかったので、ググってみました。
このつなぎはフィンランドの大学生が着るユニフォームみたいなものでハーラリと呼ぶそう。
学生のイベントやパーティがあるときなどに皆で着るらしいです。
都市や大学や学部によって色が違うのだとのこと。
それで同じ色の人たちが同じ場所に集まって楽しそうにしていたのでした。
色の違う継ぎ接ぎがあるツナギの人もいたのですが、これは「彼氏彼女だったり深い仲の人と膝下部分だけ交換できる」ルールでそうしているとのこと。
違う分野の学部でも学んでいる場合も継ぎ接ぎするらしいです。
そして気になっていたワッペンですが、これはイベントに参加するともらえるそうです。
ということで、たくさんワッペンを貼っているのは「パリピ」ってことなんですね。
いろいろな文化がありますね。
ホテルに戻ってお洗濯。
明日に続きます。
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