2024年9月6日 学習・研鑽

北欧ツアー報告7日目

北欧ツアー七日目の朝。
ホテルの朝食ビュッフェは新しく生活感があります。

北欧のモーニングにも慣れてきました。
こちらのホテルのビュッフェも美味しそうな食材や飲み物が盛りだくさんです。

毎朝、朝ごはんはこんな感じ。
けっこうなボリュームがありますが、よく歩くので、昼頃にはお腹がすきます。

朝食後に街を散歩。

昨晩は暗くてよく見えなかったので、再度トゥルクの街のアアルト建築散歩。

農業協同組合ビル(1929)のエントランス。
引いたファサードは都市の中に埋もれた端正な感じですが、エントランス部分は古典的な要素が盛りだくさん。

アアルトらしい手摺。

市街にある「標準アパート」。
最初は何度も通り過ぎてしまいました。
(^^;

建物の裏側に回って「あ、やはりこれだ。アアルトだ!」って感じになりました。

再度、表に回って、入り口部分を確認。
改めて見るとアアルトらしさが盛りだくさん。(^^;

そしてこちら「トゥルン・サノマの新聞社(1930)」も昨晩に続き、外から拝見。
屋上に設置されたネオンサインは、建設当時のまま。

通りに面した正面ファサード。
昨晩は探せなくて、何度もこちらも通り過ぎてしまいました。(^^;

ガラス越しに見る階段も昨晩よりもよく見えます。
巾木のディテールが細かいですね。
手摺もスカンディアホールの手摺っぽい感じがします。

中庭側からも拝見。
建築の本ではこの緑色のオーニングが紹介されていたのですが、正面ファサードのオーニングが畳まれていて気が付きませんでした。

円筒の階段がアアルトらしい。
窓が平行四辺形になってます。

散歩からホテルに戻り、ツアー参加者の皆さんと一緒に、「トゥルク中央図書館(2007年)」を拝見。
「アピラ図書館」を設計したヘルシンキの設計事務所JKMM Architectsによって改修工事の設計がなされています。

複雑な平面構成。
アピラ図書館よりも前の設計と思われます。

分かりやすい動線。

2階の書庫への続く階段はかなり勾配が緩い。

地域によってはNGとなる掘り込みの階段手摺。

2階の閲覧室の天井はワッフルスラブ天井。

DPGカーテンウォール窓の向こうに、先ほどの新聞社が見えます。
ペントハウスの様子が分かります。
ペントハウスに行ってみたくなりますね。

新旧建物のつなぎ目。

南側の日射遮蔽もしっかり出来てます。

中庭部分に遺構が保存されていました。

中庭側のエントランス。

中庭に出っ張った閲覧コーナー。

たくさんの居場所のある図書館でした。
JKMM Architectsが人気があるのもよく分かりました。

バスに乗って、トゥルクの街にあるエリック・ブリュッグマン設計の「復活礼拝堂(1941年)」を拝見。

松林に囲まれた共同墓地の敷地内にあります。

苔むした外構が静かな悲しみの場であることを感じさせます。

祭礼の合間の3分だけ許されて礼拝堂を見学出来ました。

鐘の音が厳かです。

礼拝の合間のほんのわずかの時間だけの拝見だったので、写真を撮るだけで精一杯。
空間を堪能する時間はありませんでした。

内部のティテールはことごとく丁寧に作り上げてありました。
アイアンの装飾がどれも美しいものでした。

石の壁に打ち込まれたコート掛けは折り畳み式。

ブリュグマンのお墓もお参りしてきました。

同じ墓地内にある「聖十字架礼拝堂(1967年)」に移動。

ペッカ・ピトゥカネン設計によるもの。

あいにく

あいにく外装の改修工事中。

エントランスポーチのキャノピーもコンクリートむき出しの状態。

コンクリートの鉄筋被りが少なくて爆裂してました。

工事用の屋根がかかってしまっていて、ファサードの端正な感じが見えないのが残念です。

大礼拝堂。
マッシブな石を切り抜いたような冷たい空間に低い位置から外光が差し込みます。
悲しみの場所への光の取り込み方がうまいですね。

後方の2階聖歌隊席への階段。
円形の型枠でのRC打ち放しは大変だったと思います。

後方の天井面からのスリット状に光を取り込んでいました。

小礼拝堂。
大礼拝堂と同じコンセプトで設計されていました。

エントランスの案内カウンターは丸ではなくかなり角ばってます。

控室前の待合ホールにも柔らかなトップライトからの光が差し込んでいます。

さらに小さな小さな礼拝堂。

細部まで担当して参りました。

復活礼拝堂や聖十字架礼拝堂のある墓地から西へ移動した川向いにある「聖ヘンリー・エキュメニュカル教会(2005年)」を拝見。
設計はMatti Sanaksenaho(マッティ・サナクセンアホ)。

松林の丘の上に松林と同化するように建っています。

妻側の入り口から入ると合掌構造の集成材登り梁のアーチが迎えてくれました。

思わず声が出てしまう圧倒感。

足元の照明のディテール。
曲げた銅板でブラケットライトを隠していました。

シンプルな祭壇と集成材アーチがマッチしていました。

自然光を巧みに取り入れていました。
やはり良い建築は見ておかないといけませんね。

トゥルクの街からパイミオの街へ移動途中にお昼ごはん。

ショッピングセンター内にあるカフェテリアでランチ。

肉料理のランチセット。
なかなかのボリューム。
しかも美味しい。

ショッピングセンター内のドリンク売り場。
かなりの量の在庫です。

今回のツアーの目的の一位二位を争う目的地である「パイミオのサナトリウム(1933年)」に到着!

建築を勉強した人にとっては知らない人はいないアアルトの代表作です。

パイミオカラーと呼ばれるオレンジ、グリーンのオーニングでお出迎え。

特徴的な形の玄関のキャノピー。
このキャノピーの形は何をモチーフにしているか、ご存じの方は少ないと思います。
答えは後程。

サナトリウムの模型。
分棟配置の様子がよく分かります。

結核患者の療養施設として作られましたが、現在は総合病院として90年経っても現役で使われています。
ディテールの一つ一つにキュンキュンします。

ガイド付きで隅々まで拝見してきました。

サービス棟の食堂の様子。
上部にも吊られたカフェテリアが見えます。

窓の開閉機構。

当時はプランター置き場だったようですが、現在はパイミオチェアが置かれていました。

カフェテリアの暖炉。
患者さんがここにお酒の瓶を隠していたらしいです。

玄関キャノピーの上から見た様子。
この角度ではなんだか分かりませんね。

もう一つ上の階からみたキャノピー上部です。
そうです。
肺の形をしています。
結核の療養施設に肺のモチーフとはシュールです。

過去のアアルト展で見かけていたドアハンドル。
実物です。
これだけでも感動です。
衣服が引っ掛からないような工夫がなされています。

こちらも窓の開閉機構。
結核の治療には新鮮な空気が必要と言うことで、とにかく換気が考えられています。

オーニングと窓の開閉機構。

日射遮蔽の仕組みや換気システム、暖房システムなど当時の最先端技術が取り入れられています。

手摺にも配慮がなされています。

結核患者さんはエレベーターの使用が許可されていなかったとのこと。
呼吸器が弱っている患者さんが使うことになる階段は、とっても緩やかで上り下りがしやすくなっています、
そして転倒しても怪我が少なくなるように段の角が丸くなってます。

昔は作業場だったと思われるホール。

看護師の個室。

階段の踊り場に当時の椅子が展示されています。

最上部の外気浴用テラス。
抗生物質が発見される前なので、新鮮な空気と日光を浴びることで結核を治療していました。
外気浴場は見晴らしもよく、とても気持ちの良い空間でした。

当時の写真が展示してあります。
竣工時は庇が短かったようです。
おそらく夏場に相当に扱ったのでしょう。
後から庇が追加されたようです。
完成後もアアルト自身がかなり多くの部分で改良を加えてきたとのことが分かります。

実際に体感してきました。

外気浴場はベッドに寝た位置から見て、手前のプランターに植えられた松と周囲の松林が一体となるように計画され、手摺の縦桟も松の幹と同化する色で塗られています。

テラスの端部にある非常用ハシゴ。
かなり怖いです。
これは有事の際にもかなりの勇気がいります。

患者さんは乗れないエレベーター。
今も現役で使われているそうです。

各階の廊下は、パイミオカラーと呼ばれるイエロー、オレンジ、グリーン、ターコイズで塗り分けられています。
フロアも当時のままです。

竣工時と同じ内装に戻された保存展示された病室。

クローゼットも角が無いディテール。

サナトリウム用に音がしにくく飛び散りにく設計された手洗い器。

実際に試すことが出来ます。

病室のカウンター下の床も曲線で仕上げられ、優しく患者さんを包み込むような配慮とお掃除がしやすくなっています。

内部見学後に建物外部から調査。
どの建物にも共通して言えることですが、こちらの施設も周辺の松林を取り込んだ計画です。

別棟にあるお医者さんのお家。
社宅みたいなものですね。
こちらは現在もお住まいの方がいらっしゃるので拝見は出来ませんでしたが、快適そうな感じがしました。

パイミオを離れ、ヘルシンキの街に到着。
フィンランド訪問の最後の都市となります。
路面電車の走る街はやはり趣がありますね。

夕食後に人気のサウナ施設「Löyly(ロウリュ)」に来てみました。
設計、フィンランドの建築事務所Avanto Architects。
海に飛び込むことが出来るサウナと知人から聞いていて、来てみたのですが、想像以上に人気が高いらしく、予約で一杯で入れませんでした、、、、。

空が青くてキレイでした。

先のサウナは、ヘルシンキの湊にありました。
仕方がないのでヘルシンキの街を散策しながらホテルまで徒歩で戻りました。
帰り道で見かけた古い港のガントリークレーン。
迫力があります。

港町はいいですね。

「Löyly(ロウリュ)」のサウナは残念でしたが、ホテルのサウナを楽しんでおきました。
明日は一日ヘルシンキの街のアアルト建築巡りの予定です。



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