2010年6月9日 学習・研鑽
米国住宅産業研修 第三日目
3日は、「サブプライム以後の米国工務店の生き残り方法を理解する」というテーマで、オレゴン州では小さな工務店であるBrighten HomeのJohn P. Pyles氏にお話を伺いました。
16年前の1994年に独立し、工務店をやっているそうです。最盛期では年に12棟でしたが、ここ数年は2棟~3棟の規模に縮小されながらも家作りを続けられています。特に宣伝等はなく、口コミでつながっているそうです。リタイアした夫婦の家を得意としており、注文住宅よりも建売住宅を好んでいるそうです。というのも建売と言っても我々が考えるような日本の建売ではなく、工務店や開発者が独自のコンセプトとデザインを用いて住宅造りを行い、出来上がったものを気に入った人が購入するというスタイルだそうです。アメリカでは車などもオーダーするのでなく、自分で気に入ったものそのものを購入することが多いそうです。建売住宅を直訳するとReady Made Houseですが、スペックホームって言っています。Speculative Homeの略だそうで、投資住宅という意味になります。米国ではBlue Prrintと言って、既成のプランニングされた図面を購入して建てることもよくあるそうですが、Johnは人があまり購入しないような悪条件の土地を購入して、そこを創意工夫によって設計した住宅を建てて売るのを得意としているとのこと。工期的には基礎を含めて100日で仕上げるそうです。2×4によってシステム化された施工方法により、米国では一般的な工期です。
昨日お話をお伺いしたNAHBは8年前に脱退してしまったそうです。コストカットの種目で最初に挙がった項目だそうです。かかる費用に対してのBenefitが期待したように得られなくなったことが要因とのこと。
John氏は自己資金があるので現在は銀行から借り入れをすることなく、住宅会社を行っているそうですが、昨日話を聞いたところでは、米国から銀行にローンFeeを払うことで、直接お金の貸し借りなしに施工が可能とのこと。日本には馴染まない方法かも知れませんが、良質な住宅を供給するにはよい方法かも知れません。ただ、社会的な仕組みがないとこればかりは難しいです。
午後からは郊外の住宅建設現場に移動しての現場見学です。途中でハンバーガーショップによって昼食です
私は定番のチーズハンバーガーとレモネードにしました。大味ですがおいしかったです。
Orencoというポートランド郊外にある新興住宅地です。周囲ではたくさんのハウスビルダーがそれぞれ住宅地開発を行っています。Legend Homesというハウスビルダーさんの現場を拝見しました。かつては年間400棟を建設していたそうですが、親会社の倒産とこの住宅事情により今は年間65棟だそうです。
4班に分かれて、(1)構造躯体完了、(2)設備機器完了、(3)気密検査、(4)最終検査のそれぞれの建物の見学が行われました。
まず構造躯体の施工が完了した状態を見学です。
市の公的検査員のティム氏からインスペクションの詳細についてお話いただきました。
このようなインスペクションシートがあり、この建物は29項目の検査が行われるそうです。1回に2~3個の検査が行われるので、計10回は検査が行われることになります。朝の6時までにエントリーされれば、その日のうちに検査するそうです。検査の際に、ビルダーが立ち会う必要はなく、勝手に現場に来て、きちんと図面とおりに出来ているかを確認していくそうです。この検査に通らないと次の工程にに進むことができないとのこと。検査員は、構造、空調機械設備、水道設備、電気設備の4つの専門の検査員がそれぞれ自の検査範囲を検査するそうです。
申請をして許可されたドキュメントには、穴の開いたスタンプが押してあり偽造はできません。日本で言う確認申請書ですね。
検査員はこのコンピューターを各自持っていて、これにスケジュールや検査内容が入っていて、検査結果はレシートをプリントアウトして現場に置いていくほか、現場のマネージャーはウェブサイトで確認できるそうです。
検査費用は、ほぼ建物の10%とのこと。2000万円の家なら200万円と言う事になります。とても高く感じますが、この200万円には市の学校の税や上下水道のインフラ設備なども含まれているそうです。つまり住宅購入の際の不動産取得税に含まれているような感覚です。
すべての検査にパスすると、このCertificate of Occupancy という検査済証が発行されます。
窓は日射量などの数値的な確認がなされます。
窓の周囲の周囲はきちんとコーキングで気密が取られています。これも検査対象です。
構造金物も検査されます。
階段の構造、仕様も検査対象です。
玄関扉の取り付けを行っています。他に職人は居らず、現場は道具も材料もなく、とってもきれいな状態です。というのも職種が専門化されているので、各職が手離れがいいのです。
お風呂は窓を強化ガラスにしなければならないそうです。地震時に割れて怪我をしないためだそうで、これはオレゴン州のコードだそうです。
寝室は、窓の大きさが規定されているそうです。家事などの際に避難するためです。以上から、構造、安全、省エネに関しては公的検査機関によって検査されていることがわかります。
次に設備工事完了状態の建物を見学しました。
説明は現場のプロジェクトマネージャーのマーク氏です。
いろいろと設備工事がなされています。基本的には日本と同じです。サヤ管ヘッドなど省力化が図られています。
現場には許可された図面が貼ってあります。黄色い部分が特に大事な部分だそうです。
窓には許可の図面から変更されたことについて貼り出されています。
これがオレゴン州のコードです。
現場の工程について説明しています。一つ一つの許可証が貼られています。
レジェンドホームさんでは、社内的に気密住宅に取り組んでおり、ENERGY STARというグリーン基準を守っているそうです。外気に通じる配管は専用パッキンを通して設置しています。
窓サッシの下部には、ドイツ下見の板を差し込んで勾配を確保しているそうです。きっと過去にここからの雨水の浸入があり、独自に考えたことだと思います。
内部の壁の中を通る配管配線部分にはこのようなスチールのプレートが取り付けられています。これは内部のボードを貼る際に、釘で打ち抜かないようにするためだそうです。これは便利ですね。是非取り入れたいです。でも日本では見かけない材料です。明日ホームセンターに行く予定なので買って帰ろうかな。
壁の断熱材の充填状況です。2×4材のあいだもコーキングして気密を確保しているそうです。
次の建物の移動中に、ペインターが天井の塗装をしていました。足に竹馬を履いています。この竹馬、見たことあるぞ!秀さんが持っているのと同じです。
次にレジェンドホームのマネージャーのバーン氏から気密試験の説明です。グリーンビルディングのテストシートがあり、70ポイント以上確保しないといけないそうです。90ポイント以上でシルバー、120ポイント以上はゴールド、140ポイント以上はプラチナの称号が与えられるそうです。気密住宅については、参加者のほうが厳密に行っている会社が多く、内容については、いかがなものかとの感想でした。
なんだかきちんと気密が取れているのか不明です。
熱源装置について説明がありましたが、数値的にすごいのか悪いのか分からなかったです。
最後に最終検査の現場にお伺いしました。
クオリティーマネージャーのキャロル氏から説明を受けました。引渡しの10日前に最終のチェックを行い、5営業日前にはお客さんと一緒にチェックして、引渡しまでに直して引き渡すそうです。
このような家のデータをまとめたものとメンテナンス方法を書いたブックレットを引き渡し時に渡しているそうです。
最近ではブックレットでなくデータをCDで渡したりしているそうです。アメリカでは平均して5年ごとに家のオーナーが替わるそうで、このような家に関するデータをまとめた資料は大事だそうです。
ショールームに移動する途中に、職人への注意書き看板がありました。どこの国でも同じようなことが書いてあります、、、。(^-^;
外にはもう職人の姿はありません。こちらは朝7時から夕方4時が労働時間だそうです。9時までは明るいので、このあと十分にスポーツなどの余暇が楽しめるんですね。
最後にショールームを拝見しました。
仕上がりとしては、お世辞にもよいとは言えず、デザインも、材料も、施工方法もチープな感が否めません。せっかく見せてもらったのに辛口で申し訳ないです。逆に言えば、日本の住宅のデザイン、仕様材料、工法ともにかなり優れていると言うことができると思います。青木会長と話をしていたのですが、この10年くらいで逆転しただけのことであって、10年前は日本もひどかったとのことでした。
講習後にレジェンドホームさんがサンドイッチを用意して下さいました。お昼のハンバーガーがボリュームがあって、まだ胃がもたれています。 しかしこれもおいしかった、、。
夜はドイツ料理です。もうお腹いっぱいです。連日で胃が疲れてきました、、、。
お店のウェイターとウェイトレスによる歌のアトラクションがありました。上の三角を押してみてください。
チーズフォンデュです。
肉料理です。左からビーフ、チキン、ポークです。もう食べられません、、。と言いながら、すべておいしく頂きました。r(^ω^*)))
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