2021年4月26日 材料・仕上・工法・設備

新時代の森林管理・林業経営に向けた提言

昨日、毎月恒例となった業界の重鎮の方々とのzoom飲み会がありました。

その席で東京大学の松村先生から「日本林業経営者協会 青年部」から昨年末に出された提言書がとてもよくまとめられている」とのお話を頂きました。
早速その提言書を拝見させていただいたのですが、林業経営者である山側の切実なる実情が記されているものでした。心の叫びとも感じられます。
ウッドショックが表に出てくる前の昨年の11月4日に日本林業経営者協会 青年部から「新時代の森林管理・林業経営に向けた提言」として政策提言されたものです。

気になったトピックを上げてみました。

・間伐材の増産が買い叩きを誘発、材価低迷へ
・無垢材需要の減少が林業苦境の要因
・大手の住宅には国産材製材品が使われにくい
・国産材製材品の需要は工務店・ビルダーが牽引
・違法伐採や再造林放棄地からの出材に係る問題
・国有林からの出材に係る問題

などなど、興味深く、身につまされる内容が連なっています。

興味深い提言内容について、下記に書き出してみました。

「ヨーロッパでは伐採後の天然更新が容易なため、再造林や育林のコストがそれほどかからない(杉やヒノキの天然更新は難しい)」

「国産材を使用しているメーカーでも大壁工法における構造用集成材などが中心で、ハウスメーカーが国産材に切り替えようとすると途端に供給不足になる」

「『林業を営むための最低限満たすべき基準』というものがなく、SDGs時代に即したシステムにアップデートされていないということは問題」

「伐採しても再造林が行われず、将来的に大幅な森林蓄積量の減少、山林の荒廃に繋がる」

「林業においては『土地を守る』ことも大事 「再造林コスト」「育林コスト」だけでなく、作業道などの「インフラ補修コスト」「森林管理コスト」も長期の経営の中では「土地を守る」ために当然負担すべきコストとしてとらえられてきた」

「各県の過去10年の素材生産量の推移を見ると、奈良県と三重県は大きく減少している。林業経営が代々継承されてきた日本最古とも言える伝統的林業地域で持続的経営が困難な状況にある」

「林業従事者数は年々減少し、林業の高齢化率(65歳以上の割合)は25%と高いが、若年者率(35歳未満の割合)は平成2年以降上昇傾向にある」

「ヨーロッパ(ドイツなど)では造林、育林費がほとんどかからない ドイツの造林経費は10年間で100分の1にまで低減されている アメリカでも経費は10分の1になっている 一方、日本は2~3割しか削減されていない」

「立木価格が懲罰的に低い中、良い山を創っていくという目標を持ってやってきた人たちは、世の中が変わり、目標さえも不明確になっている」

「地方において、資源の地域内での多角的な消費・活用が可能になれば、その地域は外部依存しない自立した林業経営が可能になる」

「住宅・非住宅物件だけでなくグリーンインフラを視野に入れた土木利用や、他産業(養殖業など)の活用、神社仏閣の修繕など、地方の自治体内で利用できる場所は多角的にあり未開拓な利用方法もあると考えられる」

「日本の資源として、木材の多角的活用や流通範囲の多様化を進めることで、災害に対するリスク分散を行い、持続可能な林業の実現を目指したい」

この混乱をしっかりと予見され、過去と現在と未来をしっかりと見据えた提言内容と思います。また提言の中には、4年前に他界されてしまった山長商店社長だった榎本崇秀さんの遺志と仲間の決意についても触れられています。

この提言は、林野庁他、国策を行っている人たちに届いていたのだろうか。

ここにウッドショックという過去に経験のない状況を打開するための答えがあるように感じます。

提言書は下記リンクから「新時代の森林管理・林業経営に向けた提言(林経協 青年部会)」をご覧ください。

https://www.rinkeikyo.jp/about/proposal.htm?fbclid=IwAR1eHpQbBbfnjXDrGUV-myI7-XVTd0Z6Zmabi5-T-Hnmdfd2fdeLR_KSLZc



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