2015年10月26日 家づくりコラム

杭の偽装問題で思うこと

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ニュースを騒がしている杭の偽装問題で思うことを記しておきます。

今回の事件、マンションやビルなどの荷重の重い建築物を軟弱地盤に建設する場合には、地盤(支持層)までしっかりと支持杭を届かせて荷重を伝える必要があるのですが、その支持杭が支持層に届かなかったことが問題です。

下請け(正確には3次下請け)の技術者が何かしらの理由によりデータを偽装したことが原因ですが、なぜ一人の技術者がリスクの大きい偽装をする必要があったのかそこが分かりません。

工期やコストのプレッシャーがあったとの報道がありますが、それだけで危険な偽装をするであろうか。そこには「こんな仕事やってられっか。適当に済ますしかないな」と思わせるような何かがあったのではないかと思ってしまいます。自分の会社や発注者に損害を与えようという悪意があったとしか思えないのです。そんなことでもない限り、データの改ざんというリスクの大きなことを一担当者が行う理由が見当たりません。

報道では再発防止の方法などが解説されていますが、マンションやビル建設での下請け構造の施工体系では再発防止は難しいものと思われます。

どんなことであれ、人が行うことなので、間違いや失敗は起こりえること。その間違いをチェックする仕組みが必要ですが、何に対して合っているのか間違っているのかモノサシが必要です。そのモノサシとなりうる基礎データを偽装されてしまうとチェックのしようがありません。被害者と善意の加害者が増えるだけです。

私が思うところでは、間違いの無い仕事を行うためには「その仕事を誇りに思って仕事をしているかどうか」ではないかと思います。工期やコストのプレッシャーがある場所では「やらされている感」が生じてしまい、一時的とはいえ、プロとしての意識が欠如する判断をする者が現れてもおかしくありません。

また、「クライアント(施主)の顔が見える関係で仕事ができているか」と言うことも大事だと思います。「誰のための仕事なのか」を感じて仕事が出来ていないことも大きいのではないか。実際に作業を行う人が一人ぼっちになっていないだろうか。任されて責任感を持っている人たちばかりではないのが現実。現場でしっかりとコミュニケーションがとれているだろうか。「お茶買って来たよ、お茶にしよう」とたわいのない雑談をすることも大事な時間。クライアント(施主)の顔の見える関係であれば、大事なクライアントの顔に泥を塗るような今回のような事件は起こらないものと思います。

適正な価格と適正な工期で、しっかりとコミュニケーションをとれた関係での仕事が不可欠です。「安くしよう」と思えば、コストと工期にしわ寄せが出ます。「『正しいものを作る』ためには、適正な価格と適正な時間とコミュニケーションが必要」と言うことを消費者やディベロッパーも改めて知る必要があるのだと思います。

(写真は木造住宅での地盤調査の様子です)



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