2017年1月15日 家づくりコラム
暖房設備の選び方
●住宅にとっての暖房設備
住宅にとっての暖房設備としては、①石油ストーブ、②ガスストーブ、③電気ストーブ、④エアコン、⑤ガス式床暖房などいろいろとあります。それぞれに長所短所があるので、下記に簡単にまとめてみました。
①石油ストーブ
<メリット>
・吹き出し温度が高いので、即効性がある
<デメリット>
・室内空気を汚染する
・温度ムラが生じる
・石油単価が年によって上下する
・石油の継ぎ足しが面倒
・火災の心配あり
②ガスストーブ
<メリット>
・吹き出し温度が高いので、即効性がある
<デメリット>
・室内空気を汚染する
・温度ムラが生じる
・ガスコンセントが必要
・ガスホースが邪魔になる
・火災の心配あり
③電気ストーブ
<メリット>
・器具が安い
・室内空気汚さない
・ランニングコストが高い
・温度ムラが生じる
・火災の心配あり
④エアコン
<メリット>
・エネルギー効率が良い
・室内空気汚さない
・タイマー制御が可能
・火災の心配が無く安全
<デメリット>
・上からの送風となり床を暖めにくい
・風が不快に感じる
・外気温が低い場合に効率が落ちる
⑤ガス式床暖房
<メリット>
・部屋を均一に暖めることができる
・タイマー制御が可能
・火災の心配が無く安全
<デメリット>
・イニシャルコストが高い
⑥電気式床暖房
<メリット>
・部屋を均一に暖めることができる
・タイマー制御が可能
・火災の心配が無く安全
<デメリット>
・ランニングコストが高い
⑦パネルヒーター
<メリット>
・室内空気汚さない
・火災の心配が無く安全
<デメリット>
・イニシャルコストが高い
・ランニングコストが高い
・部屋全体を暖めるには非効率
⑧薪ストーブ
<メリット>
・圧倒的な熱量により暖かい
・炎が見えてくつろげる
<デメリット>
・薪の入手が難しい
・煙が出るので、住宅地には不向き
・煙突工事が高い
・火災の心配あり
⑨ペレットストーブ
<メリット>
・圧倒的な熱量により暖かい
・炎が見えてくつろげる
・住宅地でも設置可能
<デメリット>
・ランニングコストが高い
・火災の心配あり
石油ストーブやガスストーブは、放射熱によって熱を伝えることが出来るので即効性もあって暖かさを感じやすいものではありますが、燃焼ガスの発生により室内の空気を汚染するという大きなデメリットがあります。
石油やガス熱源のFF式のファンヒーターもありますが、床置きのものがほとんどで、それなりの置き場が必要となるほか、温度分布が偏りがちになるため快適感が少ないものです。
電気ストーブは、電気と言う高級なエネルギーを熱に変えてしまうという効率の非常に悪いものです。一時的な補助暖房として使うことに限定し、主暖房として使うことは避けるべきと思います。
ガス床暖房は直接肌が触れる床を暖めることが出来、部屋の温度分布も均一に出来るので良いもので、冬期の快適さは抜群です。一度味わってしまうと止めることが出来ないほど暖かくて快適なものです。床暖房引水パネルを床下に敷設する必要があり、また給湯器も専用のものを設置することになるので、少々イニシャルコストとして初期投資が必要となります。
電気式の床暖房は前述の通り、効率がとても悪くランニングコストが莫大となってしまうので、結果として使用することを控えることになってしまうので、設置はお勧めしません。
パネルヒーターは室内の空気を汚染しないので、安心して使用することが出来ますが、部屋全体を暖めるにはかなりの高気密高断熱化が必要となります。脱衣室やトイレなどの小さな空間を暖める時に適していますが、熱源機が必要となるので床暖房と併用するのがお勧めです。電気式のパネルヒーターは効率がとても悪くランニングコストが高くなるので補助暖房として活用するにとどめ、主暖房として使用することは避けたほうが良いと思います。
薪ストーブは圧倒的な熱量によりとても暖かいもので、炎のゆらぎがこころを落ち着かせてくれるなど、憧れの設備です。住宅地では薪の入手や煙などの問題があり、なかなか導入するにはハードルが高いものなってしまいます。ストーブ本体の価格は廉価のものから高価なものまでいろいろありますが、いずれにせよ煙突の工事費がそれなりの費用となるので注意が必要です。
ペレットストーブはペレットの入手も容易になってきたこともあって最近人気となっています。炎の揺らぎがある生活はとても楽しいものです。ランニングコストは石油ストーブと同じくらいかかります。補助暖房としては良いですが、主暖房設備とするには少しランニングコストがかかります。
エアコンは、外の空気の温度と室内の空気の温度をヒートポンプと言う技術で熱を移動させるだけの機能なので、エネルギー効率がよく、住宅の空調設備としては優位性の高いものと考えます。「外気温が低い場合に効率が落ちる」というデメリットがありますが、これは寒冷地などで外気温が氷点下となるような場合に顕著に現れるもので、横浜などの温暖地とされる地域ではほとんど影響がありません。またエアコンは、「冷房」という夏期にも使うことが出来るという、他に変えることの出来ない優位性があります。
以上のように、住宅の暖房設備にはさまざまなものがありますが、断熱性能をしっかりと確保し、目的にあった器具を選ぶことが大切です。
※「エアコンは乾燥しやすい」の誤解について
「エアコンは乾燥するので嫌い」という声を良く聞きます。これはまったくの誤解で暖房時にエアコン自体に湿度をコントロールする機能はありません。最近では加湿できるタイプのエアコンもありますが、基本性能としては「空気を乾燥させる」機能は持ち合わせてはいないものです。ではなぜそのような誤解があるかと言うと、石油ストーブやガスストーブは化石燃料を燃焼して熱を得ているので、熱と一緒に水蒸気も発生させており、それと比べてしまって「エアコンが乾燥する」と思われているようです。しかし石油ストーブやガスストーブは、水蒸気と一緒に二酸化炭素、二酸化窒素、揮発性有機化合物(VOC)などの汚染物質が放出されるため、定期的な換気が必要となります。国民生活センターの実験結果によると1時間に1~2回の換気が必要とされており、せっかく暖めた空気を逃がす他、外の乾燥した空気を取り込むことになるので、大変非効率であると言えます。エアコンが乾燥させている訳ではないということを知っておいて頂きたいと思います。
http://www.kokusen.go.jp/test/data/s_test/n-20071005_1.html
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