造作キッチンのススメ
「造作キッチンとシステムキッチンはどちらがいいの?」
お客様からよく聞かれる質問です。
造作キッチンとは、大工さんや家具屋さんが造るキッチンで、そこにコンロやシンク、水洗、食洗器などの設備を設置して完成させます。オーダーキッチンとも言われます。自由に面材やカウンター材を選ぶことが出来るだけでなく、そこに設置する設備器具も何を選んでも構いません。簡単に言えば「自分で自由にカスタマイズできるキッチン」です。
システムキッチンは、キッチンメーカーと呼ばれるメーカーが売っているキッチンで、ある一定の規格サイズで作られています。マンションやハウスメーカーの作る家は、この規格サイズに合わせて設計されています。
(リクシルのHPより)
システムキッチンと言って思い出すメーカーは、クリナップ、サンウェーブ(リクシル)、タカラ、などなどたくさんあります。各社工夫を凝らして新機能を投入したり、新色扉を入れたりと宣伝に力を入れています。主婦の意見を取り入れ使いやすい工夫がなされているのも特徴です。
使いやすいシステムキッチンが世の中にたくさんあふれているのですが、しかし、あすなろ建築工房では、新築のお客様のほとんど(8割以上)が、造作キッチンを選ばれています。
その理由についてご説明したいと思います。
『インテリアに合った素材で、一体感のあるダイニングキッチンとなる』
あすなろ建築工房の家づくりの場合、キッチンとダイニングが一体となった空間をご提案することがとても多いです。そうなるとシステムキッチンのテカテカした素材では、ダイニング空間と一緒に見ると違和感が出てきてしまいます。ダイニング空間と一体となった落ち着いた空間とするためには素材を合わせ、違和感を無くす必要があります。洗面所への扉やダイニングテーブルに使われる木材と同じ材をアクセント使うなどで、空間全体としての統一感を持たせることが出来るのも大きなメリットとなります。
『キッチン寸法に合わせるのでなく、自分の動作に合わせたキッチンとなる』
調理の仕方は人それぞれ。食材の準備から、下ごしらえ、調理、盛り付け、後片づけの一連の流れがあり、その流れに沿ったレイアウトにするととても使いやすいキッチンとなります。敷地が違い、そこに住まう人も違うのですから、キッチンの配置条件も一軒一軒違ってきます。キッチンに合わして料理するのでなく、自分の調理スタイルに合わせたキッチンにすることが出来ます。調理だけでなく、ダイニングテーブルセッティングもひろそれぞれ。ダイニングテーブルのすぐ脇に、テーブルウェア収納を配置するなど使いやすいダイニングにもなります。また作業台の高さも使い人に合わせた高さとすることができます。使いやすいキッチンカウンターの高さは、「身長÷2+5cm」と言われています。160cmの人ならば、「160÷2+5=85cm」となります。システムキッチンの高さは、大抵が80cm、85cm、90cmの3種類の高さから選ぶことになります。しかしこれは、身長が150cmと160cmと170cmの人にはちょうど良いのですが、その間の人には高すぎたり低すぎたりしてしまいます。165cmの人には87.5cmがちょうどよいのに、その高さを選ぶことが出来ません。造作キッチンなら、使う人の高さに合わせたカウンター高さにすることが出来ます。
『ゴミ箱をシンク下にレイアウト出来る』
横浜市や川崎市ではゴミの分別が厳しく分けられており、キッチンから出てくるゴミである「可燃ごみ」「プラゴミ」「ペットボトル、缶類」は、ある一定量をため込めるスペースが必要となります。その分別ゴミをストックするスペースとしてどこがいいか?過去のお客様からヒアリングした結果、ほとんどの方が「シンク下」を希望されています。システムキッチンでシンク下がオープンになっているものは、選択肢が少なく、奥行きを確保することも難しい場合が多くなります。そこでシンク下をオープンにしてゴミ箱置き場として有効活用するには、造作キッチンとする必要があります。
『そもそも寸法が合わない』
マンションリノベーションの場合は、限られた空間に効率よくレイアウトしていくのですが、もともとが規格寸法のシステムキッチンがハマるように造られてしまっていますので、「キッチンの位置を変えたい」となると、給排水管や排気管の関係で、規格のあるシステムキッチンではどうやっても収まらないことが多々あります。空間に合わせて自由に配置するには造作キッチンでないと配置できないことも多くあります。
『ダイニング家具と一体となったキッチンとなる』
あすなろ建築工房で家づくりをされるお客様は子育て中の方が多くいらっしゃいます。幼稚園に上がる頃から「お勉強」が始まるのですが、お子様がまだ小さい間は一人で勉強できるはずもなく、当然のことながらママと一緒にお勉強することになります。幼稚園位までは、子供部屋やスタディーコーナーで並んでお勉強でよいのですが、小学校に上がり、2年生、3年生くらいになると宿題の量も増え、勉強の時間も増えてきます。そうなるとママはずっと寄り添っていることも出来ず、夕食の準備などで傍を離れることになります。小学校低学年だとまだママの目が届くところでないと不安になりますので、お子様が小さい間はどうしてもダイニングテーブルが勉強スペースとなります。お勉強の文房具やドリルを収納する場所が必要になり、ちょうど良いのがキッチンとダイニングを隔てるあたりが収納としては適切な位置となります。そのため、キッチンとダイニング家具を造作家具で一体と作ることで無駄なく、一体感のあるダイニングキッチン家具となります。
『冷蔵庫が邪魔にならない』
調理スペースの奥行きは650mmがちょうどよい奥行きとされています。そして人が建つスペースは850mmあると、後ろを人が通ることが出来、振り返って家電棚の電子レンジなどへの動作も無駄がなく動けます。家電棚の奥行きは400mm~450mmが無駄なく使える奥行きとなります。では冷蔵庫はとなると、奥行きが700mm必要となります。調理スペースと同じ側であれば50mmの差ですが、家電棚側では250mm~300mmの差となります。家電棚側に冷蔵庫を何も考えずに配置すると、冷蔵庫が250mm~300mm出っ張ってきてしまいます。ハウスメーカーの家によくみられる光景です。この奥行きの差を上手くカバーするには造作キッチンにして、無駄なく配置する必要があります。ここは設計者の腕の見せ所と言えるかもしれません。
『お気に入りの材料を選べる』
キッチンは毎日そこの前に立って一定時間を過ごす場所となります。そんな場所ですので、壁をお気に入りのモザイクタイルで仕上げたり、気に入った小物を飾ったり、かわいい取っ手を取り付けたりすると、その時間が幸せな時間に変わります。自分のお気に入りの材を選ぶことが出来るのは、造作キッチンの一番のメリットかもしれません。
『お気に入りのキッチン設備を選べる』
キッチンはこだわりが活かさせる場所でもあります。「このオーブンを使いたかった」「食洗器は以前から憧れていた大型のもので」「水洗はイタリアのこのメーカーのもので」などいろいろなご要望を頂きます。システムキッチンでは組み込まない器具も造作キッチンならまったくの自由となります。
『自分だけのカスタマイズキッチンになる』
調理の仕方、片づけ方は人それぞれ。自分の調理方法に合わせて、一番使いやすい位置に、シンクやコンロを配置するだけでなく、カトラリーを収納する引き出し、調味料棚、食洗器など自由にレイアウトすることが出来ます。キッチンに合わした調理でなく、自分に合わせたキッチンを手に入れることが出来ます。
『お手伝いしやすいキッチンになる』
キッチンには危険がいっぱい。お子様がまだ小さい間は、ベビーガードを設けるなど、お子様が入ってこれない工夫もいろいろ。お手伝いが出来るような年齢になれば、お子様用の踏み台を用意して、お手伝いもいいですね。作業台をしまえるスペースなども設けることも可能です。お手伝いする人は、お子様だけではありません。お嫁さん、お姑さん、旦那さん、奥さん、大勢で料理も作れたら楽しいです。お手伝いしやすいキッチンとすることも造作キッチンなら自由自在です。
『何十年経っても使い続けることが出来る』
システムキッチンは定期的に面材やカウンター材が入れ替わります。なので傷が付いたから、壊れたからと言っても、数年後には同じものが手に入らなくなります。造作キッチンは、大工さんや家具屋さんが造っていますので、傷がついたり、壊れてもすぐに修理することが出来ます。また食洗器や浄水器を新設したりする際も、引き出しを外してスペースを確保したりと簡単に対応が可能です。システムキッチンではなせない業です。大事に使い続けて頂くことで、何十年でも使い続けて頂けます。システムキッチンは15年くらいすると、なんだかんだで交換したくなってしまいます。
『高級システムキッチンと比べると割安』
システムキッチンの価格は様々です。30万円位~1,000万円超えまであります。まず一つ言えることは、「格安キッチンは耐久性が著しく低い」ことです。格安量産家具屋などで、格安キッチンが売られてはいますが、はっきり言って「安かろう悪かろう」です。10年経たずに取り換えることになりますので、辞めておいた方がいいです。「いかにコストを下げるか」の観点で作られていますので、数年で、扉が外れたり、水洗がガタついたり、凹んだり、などなどの不具合が多発します。キッチンは毎日使うものなので、そこはしっかりしたものを選んでもらいたいです。では普及品以上のシステムキッチンはというと、基本的に面材はシート張りとなっていることが多くなります。シート張りは新しい時はいいのですが、数年でみすぼらしくなってしまいます。特にキッチン廻りは拭き掃除が多くなりますので、日々の仕様でだんだんと表面の光沢がなくなり、一部シートが剥がれたり、欠けたりしてきます。では高級システムキッチンはというと、面材は塗装品が多くなります。またはメラミンなどの高耐久性のものが使われています。ベースとなる骨組みもステンレスが使われたりなど、耐久性を考慮した材料が使われています。価格はというと、やはりそれなりの価格となり、造作キッチンと同じくらいか、高くなる傾向があります。以上から、長く使い続けることが出来る造作キッチンは割安と言えると思います。
造作キッチンのデメリットは?
造作キッチンのデメリットはというと、まず「要望をしっかり伝えないと逆に使いにくいものになる可能性がある」と言えます。「あまりキッチンにはこだわりが無いので」というお話を頂くこともあるのですが、いざ話をお伺いしてみると、いろいろとご要望はあるものです。自分では普通と思っていることが普通でないことも多いのです。どんなキッチンで過ごしたいのか、今一度考えてみることから始めると良いと思います。造作キッチンは、面材が突板と呼ばれる本物の木材で出来ていることもあり、定期的にワックスを塗るなどのメンテナンスが必要になります。引き出しや扉の金物も最新のシステムキッチンのそれと比べると古い感じがするかもしれません。ライフサイクルコストでは優位でも、普及品のシステムキッチンと比べると初期投資としての費用が高くなることがデメリットと言えると思います。また、希望通りのキッチンにするには、要望事項を網羅した図面を描ける設計士がいること、技術のある職人(家具屋さん、大工さん、建具屋さん)がいること、水道、ガス、電気の取り合いを確認できる現場監督がいることなど、設計と施工の環境が整っている必要もあります。どこの業者でも出来る仕事ではないということもデメリットと言えるかと思います。
まとめ
以上の通り、なにかとメリットの大きなキッチンです。希望通りのキッチンとするにはしっかりと要望事項を設計者に伝える必要があります。見学会やショールームなど実物をいろいろ見て触って、要望を整理することを忘れずにしていただきたいと思います。希望通りのキッチンは、そこに立つことで幸せを感じるキッチンになります。是非実現してください。
あすなろ建築工房での造作キッチンの事例の一部を以下でご紹介。気に入った写真をピンナップするなどご活用ください。
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