サッシの選び方
断熱性能に大きな影響を及ぼす、サッシについて考えます。
目次
1.サッシメーカーと種類
2.サッシの選び方
3.アルミ樹脂複合(YKKapエピソード、透明ペアガラス)
4.樹脂(YKKap APW330、防火窓仕様 網入LOW-Eガラス 断熱タイプ)
5.あすなろ建築工房がおすすめするサッシは?
1.サッシメーカーと種類
窓サッシといっても、メーカーもたくさんあり、各社いろいろとグレードと種類があることは、皆さんご存知の通りです。
では、どのメーカーのどんな窓がよいのでしょうか?
昔はどのメーカーもアルミサッシが主流でしたが、現在は樹脂サッシが主流となっています。
大手では、LIXILとYYKapが有名どころで、他には、三協立山やエクセルシャノンなどのメーカーがあります。
その他「木製サッシ」については、プロファイリングウインドウズをはじめ、国内外に多くのメーカーがあります。
サッシの材料別には、大きくは、
・アルミサッシ
・アルミ樹脂複合サッシ
・樹脂サッシ
・木製サッシ
と分けることが出来ます。
アルミ→木製と、後者になるほど性能も価格も高くなります。
ちなみにメーカー別でいうと、YYKapやエクセルシャノンは樹脂サッシを主軸に置き、
LIXILや三協立山はアルミ樹脂複合サッシを主軸に置いています。
2.サッシの選び方
「樹脂サッシとアルミ樹脂複合サッシはどちらがいいのか?」という議論もよく見聞きしますが、どちらにも一長一短があるので、その性能と機能と使い勝手を見極めて選ぶ必要があります。
熱的性能的には圧倒的に樹脂サッシが優れています。家全体の性能アップを目指すのであれば、選択肢は樹脂サッシ一択といってよいでしょう。
一方で樹脂サッシには、デメリットもあります。
ひとことでいうととても重いのです。材料が樹脂なので、アルミに比べると剛性が足りないので、大きな窓になると中に鉄芯などを用いるために重量がとても重くなります。大きな掃き出し窓などでは、開閉に苦労することになります。
また剛性を確保するために障子が太くなります。
窓ガラスの面積が小さくなるので、外の景色を楽しみたい窓には不向きだったりもします。
単純に窓枠の熱還流率の性能を比較すると、樹脂サッシの方が断然性能が良いのですが、最近は窓ガラスの性能が進歩してきていて、LIXILのサーモスXシリーズなどは、ガラス以外の障子と呼ばれる部分を壁の中に取り込んでしまうので、窓自体の熱還流率を低く出来ています。
アルミ樹脂複合サッシは、熱的性能的には樹脂サッシに劣りますが、外側にアルミ部材を使っているので、サッシ自体の剛性が高く、結果的に障子と呼ばれる部分の見付面積を小さく出来る(スッキリ見せることが出来る)、軽く出来るなどのメリットがあります。
意匠設計にこだわる設計者がサーモスXを使う理由はこの理由が大きいと思います。
快適な家とするためには、窓、つまりサッシの性能はとっても重要です。特に冬場で外気温が5度以下まで下がるような時にその違いが見えてきます。六ッ川の家では、実験的にいろいろな種類のサッシを取り付けています。5度以下に下がると朝の窓の様子を見ることで、サッシの性能差を知ることが出来ます。
3.モデルハウスで実証実験、シミュレーションと比較してみました。
このように快適な家とするためには、窓、つまりサッシの性能はとっても重要です。特に冬場で外気温が5度以下まで下がるような時にその違いが見えてきます。あすなろ建築工房のモデルハウス「六ッ川の家」では、実験的にさまざまな種類のサッシを取り付けており、外気温が5度以下の朝は、窓の結露具合でサッシの性能差を知ることが出来ます。
そこで、シミュレーションソフトを使い、サッシの性能によってどのくらい結露に差がでるかを、現実と照らし合わせてみました。
比較したのは、
1)アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明ペアガラス)ハニカムスクリーン使用
2)アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明網入ペアガラス)+樹脂内窓(YKKapプラマードU、シングル透明ガラス)
3)アルミ樹脂複合(YKKapエピソード、透明ペアガラス)
4)樹脂(YKKap APW330、防火窓仕様 網入LOW-Eガラス 断熱タイプ)
5)木製(アルス夢まど)、Low-Eペアガラス
6)樹脂トリプルガラス(YKkap APW430、Low-Eトリプルガラス)
の6タイプです。
撮影日 2019年1月11日
シミュレーション 2019年の1月11~17日の1週間の実測の外気温、室内温度、室内湿度を用い、サッシの熱還流率を計算してシミュレーションした結果です。
1)アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明ペアガラス)
アルミサッシはダイニングの3枚引き掃き出し窓に使用しています。室内側にハニカムスクリーンをつけています。窓ガラスの下の1/3位と障子と呼ばれる枠部分にびっしりと結露が見られます。ここまで結露すると、雑巾などで結露を拭き取る作業が必要になります。これだけの量の結露をそのままにしていると、排水しきれない水が室内側に溢れたりして、室内側の仕上げや下地を腐らせてしまう可能性もあります。またカビを生じさせたり、腐朽菌やシロアリ被害の原因にもなってしまいます。
シミュレーション結果を見ると実際と同じく、ほぼ結露することがわかります。
2)アルミサッシ(YKKapフレミングJ、透明網入ペアガラス)+樹脂内窓(YKKapプラマードU、シングル透明ガラス)
アルミサッシの内側にリフォーム工事などで使用される樹脂窓(シングルガラス)を設置しています。内側の窓ガラスの隅のガラス面に結露が見られます。雑巾で拭き取りが必要です。
※シミュレーションデータなし
3)アルミ樹脂複合(YKKapエピソード、透明ペアガラス)
外側がアルミで、室内側が樹脂製のサッシです。ガラスの下部分に少し結露が見られます。雑巾でふき取りが必要です。
シミュレーション結果を見ると外気温が5度以下になる日には結露が生じていることが分かります。
4)樹脂(YKKap APW330、防火窓仕様 網入LOW-Eガラス 断熱タイプ)
樹脂サッシのため、サッシの障子の熱伝導率が小さく、障子自体での結露はありません。防火窓仕様のため、ペアガラスのスペーサーと呼ばれる部分にアルミを使用しているため、ここの熱伝導率が高いために内側のガラスが冷えてしまい、結露を生じさせてしまっています。準防火地域内で窓を防火窓にする必要がある場合は、スペーサーはアルミスペーサーとなってしまいます。これくらいならば雑巾で拭き取らなくても、室内外の気温が上がってくると自然蒸発します。
樹脂サッシはアルミサッシと比べると剛性が低くなります。そのため、大きな掃き出し窓などは、内部に鉄のフレームが入っており、引き違い窓は開閉がかなり重くなります。
また引き違い窓は引き寄せ機能が無いため、気密性能が低くなるため、引き違い窓が多くなると、家全体の気密性能が悪くなる傾向があります。
外気温が5度以下になる時に結露していることが分かります。結露量が限られていることもこのグラフから読み取れます。
ちなみに、準防火地域外であったり準防火地域でも延焼線から外れる部分の窓は、サッシを非防火仕様とすることが出来ます。ガラスのスペーサーを樹脂に、ガラス間のガスをアルゴンガスにすれば、さらに結露を抑えることが出来ることが分かります。
5)木製(アルス夢まど)、Low-Eペアガラス
木製サッシのため、サッシの障子の熱伝導率が小さく、障子自体の結露はみられません。④と同じでスペーサーがアルミのため、窓ガラス端部に結露が見られます。木製窓は断熱性能も高く、閉める際に枠側に並列に障子を引き寄せる引き寄せ機構があるため開閉も軽く高い気密性があります。見た目もよいものなので、サッシとしての性能は抜群です。
※シミュレーションデータなし
6)樹脂トリプルガラス(YKkap APW430、Low-Eトリプルガラス)
断熱性能を高めた樹脂サッシにLow-Eトリプルガラスを入れたもの。北海道では一般的なサッシです。さすがに結露がありません。可能であれば、このレベルのサッシを設置したいですね。残念なことに防火窓対応品はありません。準防火地域だと使えないのが残念です。
シミュレーションを見ても、結露が出来るようなリスクは見られません。
【参考】ハニカムスクリーンなしの場合
参考までに、窓の内側にハニカムスクリーンを設置しない場合のシミュレーションを行ってみた結果です。
室内側に遮蔽物が無い状態となるので、室内の温度で窓サッシ自体を温めることができるので、結露を抑えることが出来ますが、窓の冷気で室内が冷えてしまったり、コールドドラフト(窓面から冷たい空気が吹き下ろす現象)が起こる可能性が高くなります。
まとめ
アルミサッシでは結露を止められないことが分かります。アルミスペーサーを使用した防火窓仕様の樹脂窓であれば、ギリギリ結露を抑えることが出来ることが読み取れます。
室内の乾燥を防ごうとして加湿しても、窓の性能が低いと上記の写真のようにどうしても窓で結露してしまいます。「結露する」ということは、ある意味そこで除湿していることと同じです。どんなに加湿してもある一定レベル以上の湿度をキープすることはできなくなります。
室内条件にも寄りますが、結露を気にしない生活をするためには、樹脂以上のクラスの窓が必要と言えます。
準防火地域は使用できる窓種も限られてきます。大きな掃き出し窓は延焼線を避けることが出来る位置に配置するなど設計上の工夫が必要となります。
引き違い窓は気密性能も低くなり、大きな開口を持つ場合には樹脂サッシだと重量も重くなり開閉が困難になります。大きな掃き出し窓は価格が高くはなりますが、木製窓にするなどが良いと思います。
3.防火窓という制約
サッシの性能比較でも出てきましたが、準防火地域では使える窓の種類が限られてきます。
横浜市内とその周辺地域は、「準防火地域」に指定されている地域が多く、窓サッシは防火性能が確保された「防火窓」と呼ばれるものにしなければなりません。
防火窓は、種類や大きさに制限があるので、自由に窓を選ぶことが出来なくなります。
またリビングやダイニングの窓はウッドデッキに面して大きな開口の掃き出し窓を設置したくなるのですが、大きな掃き出し窓は防火窓のバリエーションがなく、防火シャッターを設けるか、敷地境界から離して設置するなどの設計上の工夫が必要となります。
4.窓タイプの使い分け
窓には開閉方法によって「たてすべり窓」「すべり出し窓」「掃き出し窓」など様々なタイプがあります。
「たてすべり窓」は、東面や西面に面する部屋に設置し、風を取り入れたい場所に設置しています。
「すべり出し窓」は、北面に面する部屋に設置し、風下となる場所に設置しています。
南面に面する窓は、日射取得と風を多く取り入れたいので、引き違いの掃き出し窓にすることが多いです。
これらの窓を効率よく配置することで、春や秋の中間期に風通しのよい家になります。
風を取り入れるというと、一昔前に流行ったジャロジー窓を想像する方も多いかと思いますが、気密が保てないので、いまの時代の窓としては使ってはいけない窓といっていいでしょう。
5.あすなろ建築工房がおすすめするサッシは?
せっかく風を取り入れるための窓を設けても、開閉がしやすくないと開閉するのがおっくうになってしまい、結果的に開閉されなくなってしまいます
そこで開閉のしやすい「オペレーターハンドル」の出番となります。
「オペレーターハンドル」でない場合は「グレモンハンドル」と呼ばれるレバーを用いることになるのですが、この窓の開閉の場合には、
「①グレモンハンドルで窓を開ける」、「②網戸を閉める」という2アクションが必要となり、こまめな開け閉めがしにくいものです。
「オペレーターハンドル」であれば、ハンドルをクルクルと回すだけなので開閉はとても簡単です。
また「オペレーターハンドル」は、ハンドルをクルクルと回すだけなので、手前に棚などがあっても開け閉めがしやすい利点があります。
「グレモンハンドル」の場合は、閉める際に、身体を外側に乗り出してハンドルをつかむ必要があるので、開閉におっくうさが伴います。
そして「オペレーターハンドル」の窓の場合は、窓ガラスの内側に網戸があるので、窓の開閉の際に「一時的に網戸が無い」という状態が起こらず、室内に虫が入りにくいという利点があります。
以上から、東、西、北の窓には「オペレーターハンドル」を用いた「たてすべり窓」と「すべり出し窓」を設ける計画を基本としています。
とても残念なのですが、この「オペレーターハンドル」のバリエーションがあるサッシは少なくて、樹脂サッシの場合は、YKKapの「APW330シリーズ」のみとなります。
あすなろ建築工房で「APW330シリーズ」を採用することが多いのは、この理由からです。
サッシ選びをまとめますと、
・まずは樹脂窓以上の性能の窓にする
・大きな窓は木製窓の採用も検討してみる
・防火窓でなければ、樹脂スペーサー、アルゴンガス入りにする
・室内側の遮蔽物(ハニカムスクリーン、障子、カーテン)も一緒に考える
・たてすべり窓」と「すべり出し窓」は開閉がラクなオペレータハンドルのついた窓がおすすめ
以上の観点で、窓選びして頂ければと思います。
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