住宅産業大予測2024から思うこと
皆さま、住宅産業大予測という本をご存じでしょうか。
「住宅産業大予測」は毎年、業界紙である新建ハウジングの三浦社長が執筆をご担当され、工務店業界では毎年の会社の方向性を定める上で、お正月に読むべき一冊とされているものです。
私も毎年お正月には熟読しております。
毎年1月に開催される「住環境価値向上事業協同組合(SAREX)のワークショップ」では、三浦社長をお招きして「住宅産業大予測」の解説をしていただいています。
今年も「住宅産業大予測2024」の解説をして頂きました。
ここ数年、ウッドショック、円安ショックを経て、建設材料の高騰が進み、新築住宅の価格が一気に高騰してしまいました。
マンション価格、土地価格も同時に上がったこともあり、国内全体で消費者の購入意欲が低下してきています。
具体的な分析では、2021年度比で見てみると市場規模が3割縮小するとの見方もあります。
そんな状態のため、今後の住宅産業の予測はことさら重要になってきます。
今回は住宅産業予測を読み、解説していただいた中から、私達がやるべきこと、大事なことをお伝えしていこうと思います。
住宅産業予測とは
毎年この本を読むと、「三浦社長は私の為に書いてくれているのではないか」と感じます。
つまり工務店が抱えている課題を整理してくれているんですね。
工務店に、あすなろ建築工房に足りないこと、やるべきことをしっかりと指南してくれている一冊です。
あすなろ建築工房でも社内を回覧し、毎年新年会の席でスタッフから感想を聞いたりしています。
住宅業界に生きる人にとっては、知っておくべき事項を整理して把握できるので必読本となっているものです。
全体は7つの章に分かれています。
①巻頭言 20XX年10の予言
②住宅業界の変化2024
③2024年に知っておきたい技術50
④社会経済の変化2024
⑤最新住宅ニーズ×工務店のチャンス
⑥工務店ビジネスモデル大全
⑦小説で学ぶ工務店経営
業界の危機感の総論、工務店が知っておくべき業界の変化の内容、問題解決に繋がる情報、業界内外、消費者ニーズ、可能性のあるビジネスモデルを提示し、最終的に理解を深める構成となっています。
「⑦で概要を掴み、①、②、③、④で置かれている状況を確認し、⑤でその根拠を確認し、⑥で進むべき道を確認する」と読み解いていくのがおススメです。
ただ、この冊子は「工務店向け」の内容です。
「注文住宅を建てよう」と思われているユーザーの方が読んでも役に立たないばかりか気分を害する可能性があり「お勧めできない」とまで書かれていますので、ご注意ください。
ミスを隠さないことが大事
これから家づくりやリフォームをしたい方にも有益な情報をいくつかご紹介したいと思います。
まず一つ目が住宅会社の選び方に関係する話。
ワークショップの中では、「ミスを共有できる工務店は強い」というお話がありました。
どんな仕事においてもミスや失敗は付き物。
ミスや失敗を共有して、繰り返さないための仕組み化があるかないかで会社の強さは変わってくる。
「絶対にミスを隠さない」という体質を持たなければ、これからは信用を得ることが出来ない。
そんなお話でした。
元ネタは、羽田空港での航空機事故からの話となります。
航空機業界は「絶対にミスを隠さない体質」の業界なんだそうです。
社内だけでなく、業界全体でミスや失敗を共有するのが当たり前になっているとのこと。
今回の事故は、そんな中でも起こってしまいました。
業界をあげてさらなる再発防止に策を取っていくことになるといいます。
工務店業界も「ミスを共有する」ことが大事です。
あすなろ建築工房では、社内で「再発防止報告書」を運用しています。
何かしらお客様にご迷惑をおかけしてしまうような事象が発生してしまった場合には、「発生から即時」「3日以内」「5日以内」「7日以内」と連絡、相談、報告、再発防止会議を開催するルールを設けています。
社内だけでなく、連携する仲間の間でも行っています。
名匠家(横浜・多摩地域の上質な家づくり・家守りを重ねるネットワーク)やKKB(工務店による工務店のための勉強会)で、この「ミスの共有」を行っています。
起こってしまったことを隠ぺいするのではなく真摯に受け止め、再発を防止することがお客様への誠意となると思います。
我々からすると「そんな仕組みを作っている住宅会社が選ばれる」と言うこと。
お客様にとっては「そんな仕組みを作っている住宅会社を選ぶと安心」ということになります。
今後の金利上昇の可能性
三浦社長からの情報で、興味深い内容がもう一つありました。
みずほ銀行が2023年11月に出したリポートでは、2026年の住宅ローン金利を変動金利で4.0%、固定金利で4.8%と想定しているそうです。
驚くほど早い段階での高金利時代ですが、レポートには力強い景気拡大と2%物価安定を実現した日本経済を想定した場合という前置きがあります。
しかりと賃上げが出来て、国民全体に景気の良さが感じられるようになった場合の話です。
今後は確実に金利は上がって行きます。
金利の上昇だけが起きて、賃金が上がらないということは現状ではないと思います。
そこまで日本の経済力は弱くはない。
しっかりと賃金も上がって、経済も成長していきます。
そうならないと困ります。
金利が上がるのは経済が上向いている証拠と捉え、金利上昇を怖がる必要はないと思っています。
それでも、これから家づくりをご計画の方にとっては心配ですよね。
計画を進められるなら、金利が上がってしまう前に計画を進めてしまうことが最善です。
もしも金利が上がったとしても、慌てることはないと思います。
金利が上がるってことは、世の中の経済成長が進んでいることでもあるので、金利が上がった分はちゃんとカバーできるようになるでしょう。
ただ、タイムラグは少なからずあるとは思います。
物価上昇に耐えられるだけ預貯金も上がっておいて欲しいです。
そのためにも、現金があるなら新NISAなどで運用をしっかりしておくことが一番の対策です。
タイムラグにより金利だけ上がって、所得が上がらない場合は、時期を待つことも大事です。
家は「欲しいと思った時、必要な時が建て時」と昔から言われています。
資金面について心配な場合は、ファイナンシャルプランナーさんなど金融のプロに相談してみることもよいと思います。
まとめ
近年の社会情勢により、住宅業界は市場規模が縮小するとの予測があります。
そんな中で重要になるのが、お客様に正直であること。
ミスを隠すのではなく、共有できる工務店を選ぶと安心であり、私たちはミスを隠さない工務店づくりを目指します。
また、条件次第ではあるものの金利が上昇する予測も。
賃金上昇と金利上昇のタイムラグによって、資金計画が難しくなる時期もあることを視野に入れておいていただきたいと思います。
「住宅産業予測2024」を読み、三浦社長のワークショップを受けて、大事なことや考えたことをお話してきました。
今後も皆さまの役に立つ情報をお伝えしていきますね。
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