家の購入について、親の意見との着地点
以前のコラム「親の援助が得られないか考えてみる」で、住宅資金をご両親様から一時的に借りたり、援助してもらえないかという話をさせて頂きました。
今回はその続きとなります。
親からの意見に対してどう返答したら良いのか、迷ってしまう方も多いでしょう。
今回は「親の意見との着地点」について解説させていただきますね。
家の購入に関しては・・・親の意見は聞かなくて良い?!
家づくりを検討されている方の中には、お盆休みや正月などの長期休暇中に、お家の計画についてご両親様とご相談されるという方もいらっしゃるでしょう。
ご両親からいろいろとアドバイスを受けることもありますが、ちょっと注意が必要な場合もあるんです。
新築住宅をご計画のお客様とのご相談の際、「親に言われたことなのですが」と質問を受けることがあります。多いのは次のようなご意見です。
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人生の先輩として、親の意見はとても大事です。
これまでも親の意見に従うことで、様々な危険を回避できた場面があるでしょう。
また家づくりにご両親からの資金援助を受けるため、意見は無視できないという方も多いです。
しかし、長年の経験から「家づくりに関してだけ言えば『親の意見は聞かない方がよい』ことが多い」と言えます。
家づくりに親の意見を聞かない方が良い理由2つ
家づくりに親の意見を聞かない方がいい理由。それは、ご両親様が家を建てた時代と現在との社会的背景の違いが起因します。
1.経済的背景が異なる
必ず言われるであろう一言「できるだけ安い家にしなさい」について、解説しますね。
結論から申し上げますと、親世代と現代では経済的背景が異なるためです。
ご両親が家を建てた時代は、今から30年~40年前の話で、1970年~1980年の高度経済成長期です。
定期預金に預けると8%の金利がついた時代でした。
たとえば100万円を預金した場合、15年後には利子が240万円にもなっていたのです。
現在では同じ期間を預けても数千円しか増えません。
当然ながら借りるときの金利も高く、住宅ローンを借りる場合は、銀行ローンで8%、住宅金融公庫で5.5%という時代です。
公的機関からの融資が圧倒的に有利だったため、ほとんどの方が住宅金融公庫で借りていました。
それでも金利は5.5%はしていました。
3000万円を30年借りると、金利だけで3000万円以上の金利分支払いがあり、合計返済額が6000万円にもなってしまっていました。
借りたお金以上の金額の金利を返済しなければいけなかったのです。
返済するには、月に17万円の返済を30年間続けなければなりません。
17万円×12ヵ月×30年です。
「家を建てる」には、毎月十数万円のローン返済を退職まで続けなければならなかったのですから、それは大変な時代です。
30歳台で家づくりを考えられている読者の方であれば、ご両親様も60歳台の方が多いでしょう。
まさに「数年前にやっと返し切った」という方も多くいらっしゃるはずです。
借り換えされた方もいらっしゃるでしょうが、とにかく最初は金利の支払いばかりで、元金が減らないという経験をされてきたことと思います。
高金利時代は本当に大変だったのです。
一方、現在は皆さんもご存じの通り、全期間固定の金利でも1.5%という超々低金利の時代です。
現在の低金利時代は、両親が家を建てた時代とはまったく違います。
3000万円を30年借りても、金利分の支払いは700万円程度であり、合計返済額も3700万円で済みます。
月17万円の返済とするならば、17年で返済終了となります。
17万円×12ヵ月×17年です。
昔と比較すると、同じ返済額でも13年間早く完済される計算になります。
17万円×12ヵ月×13年ですから、3500万円も手元に残るのです。
親の世代は、家を2軒建てるだけの支払いをしていたとも言えます。
2023年12月現在、変動金利だと0.5%を下回った状態が続いています。
0.3%以下の金利もまだまだあります。
もしも仮に金利が0.3%で15年間で返済すると仮定すると、金利支払いはたった70万円で、総支払額が3070万円になります。
月の支払額も先ほどと同じ月17万円で済みます。
17万円×12ヵ月×15年です。
簡単に言ってしまうと、親が家を建てた時代は月に17万円の返済を30年間続けてやっと返した住宅ローンを、その半分の15年間で返済することも可能な時代です。
固定金利にしたとしても17年で返済が可能な時代です。
両親が家を購入した時代とは、大きな違いがあることが分かりますね。
トータル6000万円の支払いをしなくてはいけなかった時代ですから、ご両親世代の方は大きな金額を借りると後々の生活がとても苦しくなっていました。
だからこそ、ご両親は「家にお金をかけてしまうと後が大変」ということが身体に染みこんでいて、親心から「あまりローンを借りてはいけない」とアドバイスされています。
2.家の性能が異なる
現代と親世代の時代では、家の性能が異なるのも親の意見を聞かない方が良い理由の2つ目です。
ご両親が家を買った当時は、家の性能も横並びで「建築基準法を守った耐震強度」「断熱性能という概念がそもそもない」という時代でした。
建築資材不足から使われる材料も新建材しか選択肢がなかったのです。
性能面から考えても「できるだけ安く建てた方がよい」というのが正解でした。
現在は空前絶後の低金利時代で、住宅性能も選びたい放題の時代です。
家づくりセミナーなどでお話ししていますが、現在は「快適で安全な家を手に入れ、ランニングコストを抑えることで、結果的に支出を抑えられる」幸せな時代なのです。
「扉は多い方がよい」は、低気密低断熱住宅が主流だった時代の話です。
気密性能という概念がなく、新築でも隙間風が当たり前だった時代の住宅性能のため、細かく仕切ることで、各部屋ごとに暖めて効率化を図る家の工夫の一つでした。
現在主流となりつつある高断熱高気密住宅であれば、家全体がすっぽり暖かくなるので、各部屋を細かく扉で仕切る必要はなく、家中どこでも暖かく快適に過ごしていただくことが可能です。
現在では、高断熱高気密の住宅性能があれば、エアコン一台での全館空調が可能になるので、扉で仕切る必要はありません。
まとめ
家づくりに親からの援助が必要であっても、何もかも親の意見を聞く必要はないと、私は考えています。
それはご両親が家を建てた時代とは、経済や家の性能などの要因が大きく異なるためです。
そのため、ご両親には丁寧な説明が必要となります。
現代では、家づくりへの背景や考え方が変わってきているため、丁寧に説明して考え方を理解してもらいましょう。
また、親から風水や家相に関するアドバイスをされる場合もありますが、それに関しては別の機会にお話ししたいと思います。
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