設計

家を広く見せるコツは5つ「限られた空間を有効に使おう」

広い家に憧れるけれど、限られた面積の中で家を作らなければならない方も多いでしょう。当社の見学会では「実際の面積よりも広く感じるおうちでした」というご感想を多くいただきます。

 

それは意識して「広く見せる」設計をしているからです。横浜は土地の価格も高く、狭小地と呼ばれる敷地も多いので、コンパクトな家となることが多くあります。

 

限られた面積を有効に使うため、「小さくつくって大きく見せる」のが設計する際に重要です。「家を広く見せるコツ」5つを記事内で解説します。

 

間仕切りをなくす

家を広く見せるポイントの1つ目は「間仕切りをなくす」ことです。一般的な家づくりでは、各部屋ごとにしっかりと間仕切りをされている場合がほとんど。廊下と各部屋は間仕切り壁で仕切られ、扉が閉まっていることが前提です。

 

通常は「各室個別空調」として、あまり高くない断熱性能をカバーするため、各部屋を仕切ります。人がいる空間を効率よく冷暖房し、廊下などその他の部分は諦めるという考えが前提です。

 

しかし、仕切りをなくした高気密・高断熱住宅にすると、家全体を冷暖房することが可能になり、間仕切りは必要最小限にできます。

 

高気密高断熱化によって、玄関とダイニングの間、スタディコーナーと子供室の間の扉は不要になります。仕切りをなくすと廊下が寒くないため、廊下で勉強もできます。仕切りたいときは、簡易的なロールスクリーンなどで対応することも可能です。

 

高気密高断熱住宅にすると暖かいだけでなく、家を広く見せることができ、広く使えます。どこにいても家族の気配が感じられ、温かみのある家になるでしょう。

建具を引き戸にする

「建具を引き戸にすること」でも、家を広く見せることができます。

 

一般的な家は基本的に「閉めている」のが前提のため、各室の入り口は「開き戸」となっています。各室の入り口を「引込みの引き戸」にすると、開けっ放しも可能ですよ。

 

開き戸と引き戸の違いは次の通りです。

 

  • 開き戸:基本は閉めて使い、通り抜けるときだけ開ける
  • 引き戸:基本は開けて使う、閉めたいときだけ閉める

基本的に「閉めるか開けるか」の違いは、家づくりにおいては大きな差です。引き戸にすると就寝時には閉めたり、昼間は引き戸を引き込んだりできるため、開放的な生活を送れるでしょう。

 

パントリーやシューズインクローゼットなど、目線だけを遮りたい場所はのれんを使ってもよいでしょう。開けっぱなしで目線が気になるときは、引き戸にのれんを重ねても有効です。

 

あすなろ建築工房でも、事務所と打合せスペースの通路部分をのれんを使用して目線を遮っています。

 

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引込引戸の開け閉めの様子が知りたい方は、動画をご覧になってくださいね。%url3%(https://youtu.be/rjQsCOpGnbw)

 

6畳、8畳、10畳のように、部屋ごとに仕切られた部屋はそのままの大きさで認識されます。間仕切り壁を減らしたり、建具を引込み戸にしたりすると遠くまで見通せるため、実際よりも部屋を広く見せられますよ。

 

フォーカルポイントを意識する

 

家を広く見せるコツの3つ目は「フォーカルポイントを意識すること」です。

 

「フォーカルポイント」とは「Focal Point」、つまり「焦点」という意味です。視線が集中する場所=最初に目に入る場所を意味します。フォーカルポイントに、花や絵画を飾りましょうなどと書いてあるインテリアの教科書もありますね。

 

私の師匠の一人である建築家の水越美枝子さんが「40代からの住まいリセット術」という著書の中で「フォーカルポイント」について次のように書かれています。

 

  • 美しい空間には、デザイナーが計算し尽くした『視覚のマジック』が随所に仕掛けられている
  • フォーカルポイントとは、閉じられた空間の中で自然に視線が行く場所のこと
  • フォーカルポイントとは、扉を開けて部屋に一歩入った時に、まず目に入る場所である
  • 「好きなもの」がもたらしてくれる幸福感は大きい

私は組織事務所時代に五つ星ホテルの設計にかかわっていたこともあり、共感する部分がとても多いです。水越さんの「フォーカルポイント」の考え方を応用し、対角線で一番長い場所に注意して設計しています。

 

初めて訪れた家で最初に見るところ、初めての空間でふと見つめるところは、なんとなく対角線上の一番遠いところです。

 

人間には初めて行った場所や、パッと視線を動かすときにまず遠くから見てしまう本能があります。

 

空間をいち早く理解するため、自分のおかれた場所を一瞬でスキャニングするのです。本能を利用して、一番視線が奥になる対角線上に「気持ちの良いもの」を意識的に設置し、心地よい空間に仕上げています。

 

「気持ちの良いもの」とは、外構に植わる植栽や真っ青な空、お気に入りの絵画などです。

 

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最初に目線をやる場所に「気に入ったもの」が見えると、人は気分が良くなります。自然に目が行くように誘導することで、居心地の良い好きな場所だと感じるようになるのです。

 

水平方向だけでなく、高さ方向にも同じ効果があるため、吹き抜け上部の隅などに窓を設けると視線の抜けが良くなり、高さ感がより強調されます。

 

「居心地の良い好きな場所」が各所にあると、「この家は広くて、居心地が良い家だ」と感じるようになりますよ。生活の中で目線が抜けて、その目線の先に「お気に入りの何か」が見えることで、生活を豊かに感じるようになるでしょう。

 

出っ張りをなくす

4つ目のポイントは「出っ張りをなくすこと」です。これはフォーカルポイントの逆パターンと言えましょう。

 

人間は「出っ張っているもの」にも自然と目が行きがちです。

 

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このようなものがあると、なんとなく見てしまった経験があるのではないでしょうか。出っ張りが気になるのは人間の本能で、原始人の時代には敵がいないか、けがをしないか常に気にしていたため、現在でも出っ張っているものを意識しています。

 

そのためインターホンやスイッチが出っ張っていると、無意識のうちになんとなく目がいき、ひっかけそう、何か飛び出してこないかなど、余計なことを考えてしまいます。

 

インターホンやスイッチはあえて見せたいものではないため、壁を少しだけ凹ませて存在を消すように意識して設計しています。

 

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壁面から引っ込むように設置するため、最初から存在に気が付きにくくなり、部屋が広く感じられますよ。

 

廊下をなくす

5つ目のコツとして「廊下を少なくすること」を意識しながら設計しています。

 

通常の家だと、廊下部分が多くなり自然と建坪は増えます。私はいつも無駄な廊下がないか、気にしながら間取りを考えます。

 

廊下も建設費用に含まれるため、注文住宅の場合には面積が1坪が建設費の100万円分に相当するのです。最近は建設資材の高騰が続いており、住宅の建設費用が高くなっています。

 

材料や設備、家具の見直しで予算を調整することも多いですが、面積を小さくするのが一番効果的です。もし使わない廊下が2坪あったら、その2坪がないだけで200万円以上コストダウンします。

 

イニシャルコストを抑えるだけでなく、光熱費やメンテナンス費などのランニングコストも低く抑えられます。子どもが巣立った後、コンパクトで管理しやすく過ごしやすい家になるため、将来を考えても効率がよいでしょう。

 

壁面収納などを併設した廊下であれば良いですが、「移動するだけの廊下」はもったいないですよね。いかに廊下をなくすか、廊下だった部分に価値を生み出すかが重要です。

 

廊下がほとんどない家はこのようになります。

 

「廊下の少ない家」を設計するのは難しく、廊下の面積を少なくするには経験の差も大きいです。私も間取りを考える際には、相当の時間を費やしています。

敷地や家族の要望、条件などをすべてクリアしながら設計するのは大変ですが、楽しいものですよ。

 

まとめ

「家を広く見せる」には、5つのポイントがあります。

 

①高気密高断熱化で、間仕切りを少なくして一つの空間にする

②建具を引込み戸にして、空間を連続させる

③対角線上のフォーカルポイントを意識して、気持ちの良いものを配置する

④見せたくないものは、凹ませて存在感を消す

⑤無駄な廊下や空間をなくし、効率の良い間取りにする

 

すべてのポイントを押さえると、実際よりも広く感じる気持ちの良い家になるのです。ぜひ、これからご設計される場合には参考にしていただければと思います。

 

狭小地を広く見せたい、気持ちの良い家に住みたいなど、ご要望がある方はいつでもご相談くださいね。お待ちしております。

 


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