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自然災害対策として家でできることは?避難所に行かなくてもよい家を作ろう

日本は島国のため、自然災害とは隣り合わせの生活となります。今後、これまでの常識が通じない自然災害が起こる可能性も無視できません。常に自然災害に対しては準備をしておくことが必要です。

集合住宅の場合には、最低限の物資や食料を備蓄している場合もありますが、一戸建てに住む方は自分自身で、家族のために必要な資材や食料の備蓄を行っておく必要があります。

もしもの自然災害の際、避難所に行かずとも自宅で過ごせる家づくりについてお話したいと思います。

避難所の環境には限界がある

自然災害が起こったときの避難所の環境についてですが、決して居心地がよいとはいえません。段ボールベッドや家族ごとの仕切り板などにも限度があります。

避難所での生活は、炊き出しや支援物資などの心配はありませんが、トイレの問題や暑さ寒さとなれない集団生活に相当な疲労が予想されます。

災害時に「避難所に行かず自宅で過ごせる」のは、家族にとっても大きな安心につながるでしょう。大規模災害に見舞われたとしても「家が安全」「家が避難所になる」と言う家づくりを行っておく必要があります。

自然災害時のための対策・備蓄は何が必要?

各家庭では、自然災害時に備えて防災用品、食料品、水を備蓄されていると思いますが、最低3日分の備蓄の目安を示します。

備蓄品
飲料水 1人3日分で9Lが目安。4人家族なら4人×9L=36L
食料品 クラッカーなど、調理せず食べられるもの・缶切り不要な缶詰など。※アレルギーのある人は、対応した食料を準備しましょう。
非常用トイレ 凝固剤と処理袋のセット。ホームセンターなどで購入可能。
非常持出品
懐中電灯、ランタン 予備電池も必要
携帯ラジオ AM・FMが聞けるもの。予備電池は多めに
貴重品 現金、預貯金通帳、印鑑、健康保険証
その他 紙皿、紙コップ、ウェットティッシュ、食品用ラップ
救急医薬品、ばんそうこう、常備薬、
生理用品、ビニール袋、タオル、軍手

参考:横浜市ホームページ「備蓄について」

さらに乳幼児のいる家庭、妊婦のいる家庭、介護者のいる家庭ではそれぞれ必要な備蓄が増えるため、各家庭の状況に応じて準備しておきましょう。

自然災害に備えた家づくりとは

自然災害に備えて、家づくりの時点で用意しておくべきことを解説します。

耐震性能

第一に必要な要件は「耐震性能」です。耐震等級とは、地震に対する建物の強度を示す指標のひとつで、等級1、等級2、等級3と3つのグレードがあります。数字が大きい方が耐震性能が高いといえます。

耐震等級の違いは、大きな地震があったときの「建物の被害の差」につながります。

耐震等級1では「避難をしなくてはいけない」中破壊状態になりますが、耐震等級2の場合には、一部修理すればとどまれる「小破壊」の状態で済みます。

さらに耐震等級3であれば、何もせずそのまま家にいられる「軽微」の状態に抑えることが可能です。

耐震性能の高い住宅でないと災害時には家自体が危険な状態となるため、避難を余儀なくされてしまいます。耐震性能の差は「そのまま家に住み続けられるか否か」の差になるため、耐震性能だけはしっかりと確保してほしいです。

上記は比較的良好な地盤とされる第1種地盤にご自宅がある場合の図です。壁量目安の第1種地盤とは、状態が比較的良好な地盤を言います。

地盤の緩い第2種地盤や第3種地盤の場合には、被害が1ランク、または2ランク大きくなり、第3種地盤だと、等級1では倒壊してしまいます。大事な家族の命を守ることなどできません。

今後の長期優良住宅の認定基準引き上げの話もありますので、許容応力度計算の上での耐震等級3は、戸建て住宅においては「必須条件」と考えて間違いないでしょう。

断熱性能

災害に備えた家づくりには「断熱性能」も重要です。しっかりと断熱材が充填され、気密が確保された住宅が「冬に暖かく、夏に涼しく過ごせる」ことは皆さんご承知の通りです。

災害時には、電気やガスなどのインフラが止まり、断熱性能が低い家だと温度による損害が非常に大きくなります。

断熱性能と気密性能が確保された住宅は、室内の温かさや涼しさをそのままキープしてくれます。極寒期でも、最低限の室温を確保することが出来ます。

冬期は日射が得られる場所であれば、十分な暖かさを確保してくれ、夜間でも16℃以下までは下がらない環境を維持してくれます。16℃であれば、防寒着があれば十分に過ごすことができます。

真夏の灼熱の際にも、しっかりと日射遮蔽と断熱が施された家であれば、外気温以上に家の中の気温が上がる事はありません。通風が確保されていれば、熱中症にならずになんとか過ごすことが可能となります。

雨水貯留タンク

大きな地震や台風の際には、停電のため浄水場のポンプ、水道が止まる可能性もあります。自宅には雨水貯留タンクを設置すると安心です。

水道が止まると、飲み水だけでなく「手を洗えない」「お風呂に入れない」「トイレを流せない」などの問題が生じます。飲料水は各家庭の備蓄があるため、給水車からの水は手洗いやトイレの排水で使われることが多いそうです。

飲水可能な品質の水を苦労して運んで、その半分をトイレに流してしまうのは少しもったいないですね。トイレの排水や手洗い程度であれば雨水で十分なため、雨水を普段から貯めておくことをおすすめします。

屋根に振った雨水をそのまま放流せず、雨水貯留タンクを経由させ、普段はそこに雨水を溜めておくというものです。

普段は、庭木への水やりに使用可能です。災害時には、雨水貯留タンクに貯められた雨水をトイレの排水に使います。トイレ用の水が常に確保されているのは、大きな安心につながります。

飲料水は家族に必要な飲料水やペットボトルの備蓄以外でも、エコキュートを採用して満水時なら470Lのお湯を確保する方法もあります。

電源の確保

災害時には停電となり、スマホやパソコンの電源が充電できません。そのため、情報を得るための電源確保も重要です。

可能であれば太陽光パネルの設置、無理であれば何らかの発電機を準備しておきましょう。最低でも携帯電話を充電できるだけの電源を確保しておきたいものです。

停電時へのリスクヘッジとして太陽光パネルの設置も良いでしょう。その際には積載荷重を考慮した構造計算、将来のパネルの廃棄やイニシャルコストとランニングコストのバランスを取った計画を立てる必要があります。

私は携帯を充電できる小さな太陽光発電パネル、小さな車用バッテリーを常備しています。ネット上で数千円で購入できますが、家族全員の携帯電話を充電することが可能です。

携帯電話充電用太陽光パネル

また1KWの電力を供給できる非常用電源バッテリー、専用の太陽光発電パネルも購入しました。これがあれば、テレビや冷蔵庫などの電源確保も可能となります。

ガスカセットボンベを用いる発電機も常備しています。カセットコンロに使うカセットガスボンベを燃料として使えるため、保管も簡単です。

情報を得るだけであれば、手回しの発電機付きのラジオを非常用バッグに入れておくだけでも構いません。非常時に何かしら発電できるものを準備しておきましょう。

普段から家のメンテナンスをしておく

そして普段から、家のメンテナンスをしておくことが重要です。

屋根の棟板金や破風板金等が外れている、外壁のコーキングが切れている、雨樋が外れているなどがあると、そこから雨水が内部に浸入し、屋根や外壁の下地材を腐らせてしまいます。

下地が腐ると、著しく家の耐久性は落ちてしまいます。地震の際に大事な構造体が役目を果たせず、倒壊する危険も高くなります。

屋根の下地自体が腐っている場合には、台風などの強い風が吹いてくると屋根自体が飛んでしまう可能性も生じてきます。実際にそのような事例もたくさん見てきました。

「家づくり」を行う際からしっかりと対策を施しておいて、災害時には避難所に行かなくとも自宅で過ごせる家を目指していただきたいです。


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