東京ゼロエミ新基準を見てG2.5基準をどう定めるか
「断熱性能はどこまでやったらよいか」という質問を、お客様からよくいただきます。
性能の良い家を求める方や高断熱高気密を手掛ける住宅関係者にとっては、HEAT20のG2基準つまり等級6は、もう一般的になってきました。
今回は、東京都が発表した「東京ゼロエミ」新基準から、断熱性能について解説したいと思います。
断熱性能の各自治体の独自基準
「G3基準、つまり等級7は大変そう。等級6と等級7の間、どの性能を目指すのが良いのだろうか」という疑問を持つ方も少なくないでしょう。
「G2とG3、等級6と7の間の基準は何を目指すべきか」は、地域の環境によって大きく変わります。
そのため、各自治体が独自の基準を設定する動きが見られます。
鳥取県や北九州市など、すでに独自の基準を設けています。
鳥取県は独自基準でG2基準をT-G2としています。
地域区分だと5地域、6地域にあたる鳥取県は、本来のUA値が0.46がG2基準つまりは等級6ですが、これをT-G2、UA値0.34としています。
北九州市はG2.5として、UA値0.38を推奨値としています。
東京ゼロエミの新基準が発表に
各地でこのような独自基準を設ける動きが加速しています。
東京都も「東京ゼロエミ」の新基準を発表しました。
これまでの東京ゼロエミ基準は、以下の3段階でした。
- 水準1(UA値0.7)
- 水準2(UA値0.6)
- 水準3(UA値0.46下)
新基準では、名称を水準A、B、Cに改めました。
- 水準A:UA値0.35以下
- 水準B:UA値0.46以下
- 水準C:UA値0.60以下
現行の水準3が中間の水準Bとなり(ひとつレベルアップ)、最低限の基準となる水準CがUA値0.6になりました。
注目すべきは、最上位の水準となる水準Aで、外皮性能をUA値0.35と定めています。
等級7という全員が目指すには厳しい基準ではなく、我々が言うところのG2.5あるいは等級6.5の数字を定めてきました。
高断熱高気密住宅を当たり前のようにやっている住宅会社にとって、G2基準、等級6のもう少し先を目指したいところに、ちょうどよい目標が定められた感じです。
東京は横浜と同様に狭い土地も多くなります。
土地が狭いということは日射取得も限られるため、UA値を小さくして熱の逃げを少なくしたくなります。
そういう意味で、UA値0.35というのは、東京の住宅立地条件に合わせた、少し背伸びした、けれど無茶ではないちょうどよい数字ではないかと思います。
最低でもQ1.0住宅レベル3を目指そう
新住協では「最低でもQ1.0住宅レベル3で全棟建設を目指そう」という目標を掲げています。
Q1.0住宅レベル3とは、省エネ基準住宅の暖冷房エネルギーに対して、6地域の場合は20%以下になる性能の家です。
年間暖房負荷と年間冷房負荷で判断してるため、結果としてランニングコストが少なくなるお家です。
このQ1.0住宅レベル3がライフサイクルコストで考えて、一番支出が少ない計算という結果に基づいた指標です。
換気も含めて考えた暖冷房エネルギーでの基準なので、UA値やQ値で示すことはできませんが、熱交換換気を採用した場合、1地域~4地域の場合は省エネ等級で等級6がQ1.0住宅レベル3と同等の断熱性能になります。
5地域〜7地域の暖かい地域の場合は、省エネ等級の6等級と7等級の間くらい、HEAT20基準で言えばG2基準とG3基準の間の性能となります。
まさにこの省エネ等級の6等級と7等級の間くらい、HEAT20基準で言えばG2基準とG3基準の間の性能が東京都が0.35と定めたあたりとなります。
地域区分6地域の温暖地の場合、G2基準の仕様(充填断熱)に対して、外壁に付加断熱50mm程度を追加すれば、Q1.0住宅レベル3になります。
つまりはUA値が0.4を下回るあたりになります。
いつもお話しているように、UA値だけで判断することは危険ですが、目安として目標値が定まることは良いと思います。
UA値だけでなく、日射遮蔽や日射取得や換気量もしっかりと考慮しなければ、快適な居住環境にはなりません。
横浜の動きは?
あすなろ建築工房が参加する横浜コンソーシアムでは、横浜独自の基準を設けようと活動していますが、なかなか具体的な動きにならないままとなっています。
横浜は、冬期も気温が5℃を下回ることはほとんどなく、夏期も35℃を超えるようなうだるような暑さはありません。
一年を通して温暖な気候です。
だからと言って、断熱性能気密性能を無視すると、冬寒くて夏暑い過ごしにくい家になってしまいまいます。
そんな温暖な気候の横浜で敢えて敢えて独自の基準を設けるとすると、北九州と同じくらいの0.38が良いのではないでしょうか。
UA値0.38であれば、将来的にも快適な環境で過ごせます。
これから横浜でも、鳥取や北九州や東京のような独自基準が定められるよう活動していきたいと思います。
まとめ
断熱性能は地域ごとの特性や環境を考慮した上で、適切な基準を設定することが重要です。
UA値やQ値だけでなく、日射遮蔽や日射取得、換気量なども総合的に考慮することが重要です。
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