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家のメンテナンスをしないと費用がかさむ!将来を見すえた修繕が必要

持ち家を所有し住宅ローンの返済が終わりかけのシニア世代では、「老後は住居費の負担は軽くなる」と考える方がたまにいらっしゃるように思います。実際にお住まいいただくと分かりますが、現実はそう甘くありません。

マンションと同様に、一軒家でも修繕費が必要です。特に築年数が古くなってくると不具合も多くなり、メンテナンスにかかる費用も増えてきます。この記事では、家のメンテナンスをしないとどうなるか、費用について解説します。

家のメンテナンスをしないとどうなる?


私が最近気になるのは、建売住宅を購入されて10年以上塗装をしないままに放置されている方が多いことです。メンテナンスをしないと次のような状態になります。

  1. 塗装がはがれる
  2. 屋根材が劣化する
  3. 割れが生じる
  4. 防水紙に雨が流れていく
  5. カビが発生
  6. 雨漏りが起こる
  7. 構造体の一部が腐る
  8. 白アリが発生

メンテナンスをしていない家では、屋根の塗装はすでに剥がれ、外壁のコーキングも切れて、外壁に苔がこびりついた状態になっているのをよく見かけます。

コロニアルと呼ばれる屋根は定期的な塗装が必要です。表面の塗装が剥がれると、セメント自体に水分が入り込み、屋根材自体が劣化します。

特に冬期に屋根材の内部に水分が入り込むと、凍結によって割れが生じます。割れが生じた屋根は雨水を下に流すことができず、下のアスファルトルーフィングと呼ばれる防水紙に雨が流れるのです。

すぐに雨漏りにはなりませんが、数年でこの防水紙も劣化して内部の構造体を濡らし始めます。構造体をつたって意外な場所でカビが生じますが、すぐに雨漏りにはなりません。

そのまま放置していると、大雨が降った際に「雨漏り」が起こります。天井を開けて確認すると、構造体の一部が腐っているため、屋根を外しての大規模な修繕工事が必要な状態なのです。

シロアリを呼び込んでしまっていると被害の範囲が広がり、さらに修繕費用は膨らみます。

前回施工した塗装の良し悪しによって、ケレンと呼ばれる前の塗装を剥がす工程で費用がかかったり、屋根材に割れなどがある場合に交換の費用がかかったりします。

塗装を行う職人や会社の知識・技術にもよりますが、コストをケチると思わぬ落とし穴が出てきます。必要な塗装の費用は本当にケースバイケースで、現状によって費用が大きく変わるのです。

10年から15年ごとの塗装であれば300万円で済んでいたはずが、適正なメンテナンス期間を超えて放置すると、500万円ほどの予想外の費用になってしまいます。定期的なメンテナンスをしっかりと行っていただければと思います。

家のメンテナンスで費用がかかるのは外回り


メンテナンスのご依頼を頂いて見積を出すと、「そんなにかかると思わなかった」という方も多くいらっしゃいます。ですが、一軒家でメンテナンス費用を安く抑えようとしても、結局はのちに費用がかかるため、ただ安く仕上げるメンテナンスは注意が必要です。

家のメンテナンスで一番費用がかかるのは、外回りの塗装です。外壁や屋根の塗り替えには100万円以上はかかります。足場も組むため、さらに20万円以上必要です。

屋根だけ、外壁だけと分けて塗装すると、足場の費用も別々にかかるため、屋根と外壁は一緒にメンテナンスする場合が多いです。

また、雨どいの塗装も一緒に行うことが多いです。屋根、外壁、雨どいの塗装を行うと、トータル200万円以上が必要になります。

ネットで価格を調べる方もいらっしゃいますが、ネットで分かる価格は「最低の価格」です。「条件が良い場合の価格」と言い換えてもよいでしょう。

「条件が良い場合の価格」とは次のような場合です。

  1. 建築後最初の塗装
  2. 築10年程度
  3. 30坪以下の総二階のシンプルな形
  4. 割れなどの劣化がない
  5. 足場の設置に障害物がない

実際には条件が良い場合ばかりではないため、見積価格は200万円以上、大きなお家の場合には300万円を超えることも多いです。

60年で家のメンテンナンスに2500万円必要!


私は著書である「家づくりのお金の話がわかる本2024」の中で、「一戸建ての修繕費は毎年5万円、10年ごとに250万円にもなり、30年間トータルで900万円と無視できない金額となる」と書きました。

ネット上では「修繕費は30年で500万円程度」と書いてある記事が多いため、「そんなのかかるの!」と驚かれた方もいるでしょうが、妥当な金額だと考えます。

家の維持には、皆さまが考えている以上にお金がかかるため、私たちはお客様に「メンテナンス費用がかからない家づくりが大切」とお話しています。

私の著書でも、一般的な建て方の住宅、高性能化の住宅、ローコスト住宅でランニング費用を比較しました。

結果は、高性能化した住宅の方が生涯コストは安くなり、その金額差は1000万円以上になります。ローコスト住宅と高性能住宅を比較すると、2400万円の差です。

2023年の日本人平均寿命は、男性が81.05歳、女性が87.09歳です。30歳代で家を建てたとすると、50年以上は住み続ける必要があります。

一人になってからも住み続ける方は多いです。今後も長寿命化していくと考えると、これからの家づくりは60年のスパンで考えた方がよいでしょう。

日経新聞の記事では、「流動的要素は多いが60年の総費用を考えると、2500万円程度になり得る」と書かれています。

住宅のメンテナンス項目は、次のものがあげられます。

  1. 外壁塗装で10年から15年ごとに300万円
  2. シロアリの防蟻処理
  3. 給湯器交換
  4. 設備機器交換
  5. 室内のリフォーム費用
  6. 給排水管の高圧洗浄や交換

60年間快適に住み続けるために上記のメンテナンスを行うと、2500万円くらいの金額はかかるでしょう。

JBNの既存改修委員会のワーキンググループで「住まいの健康計画表&住まいの健康計画ハンドブック」を作成しています。その書籍の付属物として、エクセルを用いたメンテナンス費用を算出できるツールがあります。

住宅やリフォームを検討中の方は住まいの健康計画表を用いて、メンテナンス費用を計算してみてください。全国のJBNに加盟している工務店さんには配布済みですので、お近くのJBN加盟工務店さんにご相談いただくとよいでしょう。

家の修繕費用の積立が必要


修繕費用が必要なのは、マンション修繕積立金も同じです。戸建てだから修繕金が少なくなるのではありません。マンションでも修繕が必要なため、積立をしています。

戸建てでもマンションでも、将来を見据えて、修繕費を準備して備えておく必要があります。

不具合が起こってから対処するよりも、予防にかける費用の方がだんぜん安上がりです。これは人間の健康と同じですね。

日頃から健康診断や人間ドックを受診して、大きな病気を事前に察知し、進行する前に治しておくことが大事です。

家も日頃の点検をこまめに行い、定期的にメンテナンスし、大きな修理を必要としない状態を保つと、トータルの費用を抑えることができます。また、最初から耐久性の高い材料を選んでおくことも大事です。


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