家づくり

空き家問題の解決のため今できること

近年全国の空き家が問題になっており、住宅・土地統計調査(総務省)によれば、空き家の総数は、この20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加しています。

政府だけでなく地方自治体も対策を講じていますが、現状では改善されておらず、どんどん拍車がかかっているように思えます。

空き家問題を解決していくためには下記が必要ではないでしょうか。

・費用がかかっても30年後に価値のある性能の家を作る

・空き家のまま放置せず、定期的にメンテナンスを行う

・解体時に負荷の少ない家にする

・既存住宅の価値を高め「住み替え」文化を定着化させる

今回は空き家問題の原因、解決に向けてできることを記事内で解説します。

空き家問題の原因

空き家問題の原因は下記の通りです。

  • 高齢になり、もともと家のメンテナンスができていなかった
  • 親が高齢になった後の実家を放置
  • 親が亡くなった後、相続人はさまざまな理由で空き家のままにしている
  • 世代交代できず敬遠されがち
  • 解体費の高騰

高度経済成長の際に大規模造成された住宅団地は、住まい手も70歳台、80歳台になりますが、世代交代が進みません。

年金生活では家のメンテナンスにお金をかけることも出来ず、不具合も放置されがちです。

リフォームしたり、メンテナンスする資金が足りなければ、リバースモーゲージという仕組みもあるのですが、日本にはまだまだ浸透していません。

リバースモーゲージとは自宅を担保にして生活資金を借入し、自宅に住み続ける方法。

借入人が死亡した時点で、担保となっていた自宅を処分して借入金を返済する仕組みのこと。

両親が高齢になり施設に入っても、自宅をそのままにしておくことは多いでしょう。健康寿命から考えると、施設入所から亡くなるまでおよそ10年ほど放置されている可能性が高いです。

親が死亡した後も、さまざまな事情から空き家のまま放置することが多く、放置された家は現代の生活様式にマッチしないため、代わりにすむ人も見つからない悪循環となってしまいます。

家は人が住んでいないと朽ちていくため、空き家として置いておかれた家はダメージが大きくなり、最終的には解体するしかありません。

しかし現在は解体費も高騰しているため、解体も難しいのです。この繰り返しが空き家問題の根本的な原因でしょう。

空き家問題の解決としてできること

現在、私たちが空き家問題を解決するためにできることを解説します。

費用がかかっても30年後に価値のある性能の家を作る

現在、 駅に近いエリアや工場の跡地などの敷地を無理に分割して建売住宅が建ち続けています。狭いところに作られ、住まいにくい3階建ては、高齢になると住み続けることは困難です。

購入する家族は、小さな子供がいる30代前半の家族が多り、一帯が同じ世代となるでしょう。数十年後に住み替えを考えたとしても、あまりの極小地にニーズはなく、ゴーストタウンとなる可能性が高くなります。

地方でも同じようで、古い住宅団地は住み替えされず、周辺の田畑が宅地化され、狭小地の建売住宅団地が形成され続けていることを知人の工務店さんに聞きました。

日本の家づくりは、相変わらず「造ったら造り放し」という状況で、適切なメンテナンスをされることなく朽ちていっています。

多くの空き家ができあがってしまった理由は「安い家を建て続けたから」に他なりません。これからは費用がかかっても数十年後に価値がある性能の家を作ることが重要な解決策になります。

空き家のまま放置せず、定期的なメンテナンスをする

親が亡くなった後、相続人は実家を空き家のまま放置してしまうことが多いです。それには「いつか住むかも」「親から住んで欲しいと言われている」「まだ気持ちの整理ができない」「相続人である兄弟と合意できない」などさまざまな理由があります。

放置された実家が結局メンテナンスされず、取り返しのつかないほどに傷んだ例をたくさん見てきました。

相続した人が家を維持するため、リロケーションという方法もあります。

リロケーションとは自宅を一定期間空けている間、期間限定の賃貸にすること。

ですが自宅を活用しようとしても、家の状態が悪いとそのままでは賃貸にもできません。費用をかけてのメンテナンスやリフォームにも躊躇してしまい、結局そのまま放置している家も多いと感じます。

既存の家は、最低限のメンテナンスをしていつでも活用できる状態を保つことが、空き家対策としてできることのひとつです。

解体時に負荷の少ない家を作る

このところ建設費だけでなく解体費も高騰しており、横浜周辺だと30坪の家の解体に300万円では収まらなくなっています。15年前は「3万円/坪」が解体費の目安でしたが、今はその3倍以上です。

「解体費が土地価格よりも高い」という地域もたくさんあり、解体するよりも放置を選ぶことにつながっています。今後、最初から財産放棄をする方も多くなる可能性が高いです。

新築を建てるのであれば、解体費を見込んで建てる必要があります。解体時に負荷のかかる家は、費用もかかるため、将来の解体を見込んだ建築が空き家問題の解決策にもなるといえるでしょう。

既存住宅の価値を高め「住み替え」文化を定着化させる

海外と違って、日本人は建てた後の家にお金をかけるのを避ける傾向にあります。

海外とくに欧米では、家をメンテナンスしないと資産が減ることが分かっているため、資産を減らさないようメンテナンスにお金をかけます。

それをしない日本では、大事な退職金や年金が灯油代に消えてゆき、家自体の耐久性も低下して最終的には空き家になっていきます。

これ以上空き家を増やさないため、高くても長く住み続けられる家を建て、住み替え文化を定着させることが必要です。

新築するのであれば、何年か後に「既存不適格」となる性能ではなく、30年後の基準にも合致した性能を今から有しておくことが重要といえるでしょう。

既存住宅においては、手遅れになる前に「適切な時期に」「適切なメンテナンス」を行って、資産を維持していくことが必要です。

理想は、子育てが終わって資金に余裕ができた時点で、断熱改修を含めた性能向上リフォームと屋根と外壁のメンテナンスを行っておくことです。

まとめ

現在問題になっている空き家ですが、低品質な家が作られ、メンテナンスもされなかった現状が現れているといえるでしょう。

しっかりと「将来空き家とならない家づくり」にシフトして、ストック型の社会にしていくことが重要と考えます。

ストック化された住宅はそれぞれに価値が残り、ステータスに合わせた「住み替え」ができるようになります。

空き家問題の解決策は、数十年後も価値がある家、解体も視野に入れた家を造り、メンテナンスを怠らず、住まない家は貸したり売却したりすることです。

空き家のまま放置されれば、リフォーム、リノベーションの費用が余計に嵩むことになります。

将来の子供たちのためにも、今からでも出来ることをしっかりと行っていきたいですね。


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