家づくり

家づくりにおける「快適さ」と「快感」の違い

家づくりをする場合、高性能な住宅を望む方はとても多くいらっしゃいます。

では、なぜ高性能な家を望むのでしょうか?

「快適に過ごしたいから」という理由がほとんどだと思います。

リラックスする場所である家の中では、少しでも心地よく過ごしたいですよね。

今回は、家の中で「快適」を求めるか、「快感」を求めるか、の違いを解説していきます。

家の中で得られる快感とは

快適に過ごしたいと思う方もいれば、「気持ちよさを感じたい(快感)」と思う方も少なからずいらっしゃいます。

では「快感」は、どんな時に感じるものでしょうか?

・春先のリビングで、気持ちのよい風が吹き込んできた時

・冬の極寒の時期に外から帰ってきて薪ストーブのある部屋に入った時

・真夏にギラギラ照りつく太陽の下で汗だくの状態で、キンキンに冷えた家に帰ってきた時

・風呂上がりにビールをがぶ飲みした時

いろいろあると思います。

そんな気持ちよさが続くと幸せですね。

しかしながら、快感は実は一瞬だけで、持続的に「快感」を覚え続けることはできないんです。

手がかじかむような寒い冬に外から帰ってきて、薪ストーブの前に座ると「幸せだー」と、暖かさを感じられます。

しかし、薪ストーブの輻射熱は相当なものなので、しばらく近くにいると「暑い」と感じてきます。

ある意味で「不快」な環境になっていくんですね。

「快」は一瞬で「不快」に変わる

冬に日の当たるリビングは暖かくて気持ちがよく快感を感じることもあると思いますが、それも持続しません。

冬に陽の当たるリビングで陽に長く当たっていると、そのうち「暑い」と感じてくるはずです。

夏も同じです。

先日、移動途中にあまりの暑さにコンビニに飲み物でも買おうと立ち寄りました。

自動ドアが開いた瞬間、店内はキンキンに冷えていて「あ~、気持ちいい!」と感じたのです。

しかし、レジに並んでいる間に汗も冷え、少々「肌寒い」と思うようになりました。

店員さんは全員長袖を着用していました。

お客さんには「快感」を感じる環境ですが、店員さんにとっては「不快」な環境になってしまっているのでしょう。

長く快適でいられる環境を作るコツ

長く快適にいられる空間では「快感」を感じることはできません。

つまりは「快適から少し外れた環境」においてのみ「快感」を覚えることができるということです。

家は長時間を過ごす場所となるため、一時的な快感ではなく、快適な環境とするための設計が必要です。

あすなろ建築工房では、リビングのソファに直接太陽の陽が当たらないように設計しています。

太陽の陽が直接当たる場所に長時間いると、冬であっても居心地が悪くなるからです。

暖かい家にするために冬の日射を取り込むようにする一方、人が長く滞在するところには陽を当てないようにしなければなりません。

単に低燃費な住宅だけを追い求めると、居心地が悪い家になりかねません。

このあたりが、高性能で居心地のよい家にするための設計のコツとも言えます。

同じ理由で薪ストーブを設置する場合には、リビングやダイニングの人が長く滞在する場所からは少々離した位置を選びます。

つまり、薪ストーブを設置するためには、土間空間や広いリビングなど、ある程度の余分の空間が必要となるということですね。

夏も同じように考えていきます。

「エアコンの風が嫌い」という方は、とても多いです。

過去のお住まいで、エアコンの吹き出しの風を直接浴びてしまう環境にいらっしゃったのだと思います。

エアコンの冷気は、人が常時いるところには直接当たらないように設計する必要があります。

そのために冷房用のエアコンは壁付けにはせず、ロフトや階段上や階間に設置しています。

体感温度よりも高かったり、低かったりする環境は、一瞬の快感を覚えるかもしれませんが、快適さを感じられません。

結局は「温度ムラの無い」環境が家には必要となります。

まとめ 快適な環境の重要性

以前のコラムにて「気温25℃、湿度97%」で気持ちよくウッドデッキで過ごした経験をお伝えしました。

通常であれば「気温25℃、湿度97%」の環境は、決して快適とは言えませんが、3m/sの風が吹くことで、ある意味「快感」を感じることができました。

ランダムに吹く風のおかげです。

しかし、3m/sの風が吹き続けると「寒い」と感じるようになってしまいます。

このように「快感」とは、一瞬だけの感覚です。

先にお伝えしたように「家」は長い時間を過ごす場所のため、「快感」ではなく「快適」を追求するのが重要になります。

「快適」とは、個人によっても捉え方は変わってきます。

だから住宅の設計は難しく、そして楽しいところなのだと思います。


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