設計

建築士に向いている人は?建築家とシェフの共通点

私は建築に関しての情報発信として、YouTubeやVOICYを行っています。VOICYは私だけでなく、富士ソーラーハウスの大澤さんと一緒にチャンネル運営をしているのですが、以前の話にはなりますが「建築家とシェフは似ている」なんて話がありました。

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富士ソーラーハウスの大澤社長は工務店に入る前の職業はコックさんだったため、そういった発想になったのかもしれません。

私も「なるほど」と思う点があったため、今回はシェフと比較しながら、建築士の仕事、苦労や魅力、向いている人について解説しようと思います。

建築士に向いている人は?

建築士に向いている人は、人と関わることが好きな人、そして建築が好きな人です。責任感も必要ですね。

人と関わることが好き

建築士は、お客様と直接関わってやり取りをし、最終的には「ありがとう」と言ってもらえる仕事です。

その分、家が完成するまでの苦労もありますが、基本的には人の笑顔が見られて嬉しい、人と関わるのが好きな人に向いていると言えるでしょう。

建築が好き

人が好きなことだけでなく、建築が好きなことも絶対条件です。当たり前のように思われるかもしれませんが、建築士は一人前になるまでに長い時間がかかります。

一人前になってからも、積極的に知識を得ていかなければ淘汰されてしまう業界でもあります。

ちょっと好き程度では続けるのが辛くなるため、建築がとにかく好きだという情熱がある人が建築士に向いていますよ。

責任感がある

建築士は、お客様が長年住み続けられる家を作るために最善を尽くします。途中でトラブルがあっても、中途半端で良いという気持ちではできません。

自分の仕事に責任感を持ち、お客様に必ず良い家を届けるという責任感が必要です。

建築士の仕事とは

建築士は、お客様の要望を元にしたよりよい生活環境を作るための設計をし、建設現場では工事管理をしたり、作業の指揮監督を行ったりします。

設計という世界で飯を食べていくには、常に学んでいないと、時代に取り残されるようになり、結果として生き残ることはできません。

常にガツガツと情報を集めたり、先輩や仲間の作品を見学したり、本を読んだり、日々研鑽を続けるのが建築士という職業です。

しかも、一人前だと認められるためにも高いハードルがあります。

「建築家」として認められるには

建築家は、最初は「建築家」なんて呼ばれ方はしません。最初は「設計者」と呼ばれる職業です。

いつしか一人前と認められ、仕事が出来るようになれば、「建築家」を名乗れるようになります。周りの人が認めないと、恥ずかしくて「建築家」とは名乗れないものです。

大工が「棟梁」と呼ばれるようになるのも同じですね。最初「コック」と呼ばれ、認められて「シェフ」を名乗るようになるのも一緒です。

「建築家」として認められるには、良い建築を見て学び、建材の産地やメーカーの工場に足を運んで、自分が理想とする材料を見極めるようになる必要があります。

新しい工法や材料に常にアンテナを張り、最新の情報を得続けなければなりません。

たとえば住宅設計に携わるものであれば、CADソフトだけでなく、設計ツールとなる構造ソフトや温熱計算ソフトなども扱える必要があるのです。

滞りなく現場が進むように、現場にも足を運び状況に応じて指示をする必要があります。365日24時間、設計のことを考えているようでないと、なかなか一人前にはなりません。

「建築家」になるための免許

「建築家」になるには建築士免許が必要です。一級建築士の免許を取得するには、建築学科の大学を卒業して定められた実務経験を積むことが必要です。

建築学科を卒業しない場合は、2級建築士を取得してさらに実務経験を求められるなど、かなりの年月が必要となります。

調理師免許の受験資格も同じ感じのようです。「シェフ」になるには調理師免許が必要で、調理師学校を卒業し、調理業務に従事した経験を積む必要があるんですよね。

建築士もシェフも免許を取ったからといって、仕事ができるようになる訳でもない部分も同じです。

免許がないと仕事はできないけど、取得をしたからと言って急にお客さんが増えるわけでもありません。

一人前になるには下積みが必要

建築士もシェフも「一人前になるには10年かかる」と言われている職業です。

ずば抜けたセンスを持っていたり、微妙な味の違いを感じられる舌を持っていたとしても、経験が伴わないと、お客様を満足させられません。

そして、一人前になるまでのお給料の少なさも同じです。「学んでいる状況」の若い間は、時間ばかりかかり、技術もなかなか上達せず、しかもお給料も少ない。

若い間はなかなか稼ぐことができないため、結婚できない、子供を作れないという悩みを抱えることになります。

富士ソーラーハウスの大澤さんは昔は、イタリアンレストランのコックでした。結婚して子供ができましたが、コックでは家族を養うことができず、夢半ばで仕方なく家業に戻ってきたと聞いています。

お客様からの感謝の声は魔法の言葉

デメリットが目立つ建築士やシェフですが、両方の職業に共通している大事なことがあります。

それは、お客様からの「ありがとう」の言葉をもらえる職業であるということ。「いい家だ」とか「美味しかった」という言葉を頂くことができます。

お客様からの感謝の声は、「すべてが救われる」魔法の言葉です。

どんなに時間がかかろうが、どんなに遠回りしようが、最終的にお客様から感謝の言葉を頂けます。

それまでの苦労が報われる瞬間があるという世界です。「この仕事をやっててよかった」と思える時が必ずあるのは、本当に嬉しいことなんですよね。

あすなろ建築工房には、今年も設計志望の学生さんがインターンに来ます。彼らには、設計の厳しさと楽しさをしっかりと教えるようにしています。

軽い気持ちで、この世界に入ってきてもらっても結果的に長続きしないからです。そして頑張って耐えた後には、楽しい時も待っているということもしっかり伝えます。

まとめ

建築家とシェフの共通点についてお話したところで、建築家の手塚貴晴さんが2022年に書かれていたコラムを思い出しました。

建築家になろう 建築を学ぶ学生達へ」というタイトルで、そのコラムでもシェフとの比較をされていました。

建築家は「お客さんの笑顔という最大の報酬」を得られる職業です。古くからあり、今後も必要とされ、不可欠な存在としてあり続けるでしょう。

これまで多くの建築家の方にお会いしてきましたが、リッチな生活をされている方は少なく、皆さんいくつになっても貪欲に建築に向き合い、学び続けていらっしゃいました。

学生の頃や社会に出たての頃は、私の大学時代の恩師がポルシェに乗っていたり、前職上司がNSXに乗っていたりして「リッチだな」と思ったことはありました。

今思えばバブルの頃なので、そんな人がたくさんいた時代だったんですね。頑張れば「いい車に乗れる」というのも建築家という職業なのかもしれません。

以前にyoutubeの動画を配信したことがあるのですが、そこでは「設計はチームプレー」「常に学び続ける姿勢が必要」「お客さんや職人さんからの笑顔を得ることが出来る楽しい仕事」と説明しています。

「良い仕事をすれば必ず誰かが幸せになる」それが建築家やシェフの仕事です。

これから家づくりをなさる方、リフォーム工事をする方、是非とも設計担当者には「良い仕事をありがとう」の言葉をお願いします。

レストランで美味しい食事をしたときは「美味しかった」の言葉をお願いします。そして幸せに過ごしていただければ、こんなに嬉しいことはありません。


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