家づくり

本当のエコハウスとは?ただの高性能住宅ではない!

「エコハウス」という言葉が一般的に使われるようになってから久しいです。皆さんも「エコハウス」という言葉も馴染みが深くなってきたのではないでしょうか。

しかし「エコハウス」という言葉は、正しい意味で使われていない場合も多いと感じます。「高断熱高気密住宅=エコハウス」と捉えている人が多い印象を受けますが、本来のエコハウスは環境に負担をかけない家づくりを指します。

今回は、エコハウスについて解説したいと思います。コラムの中で、本当のエコハウスの意味、エコハウスに必要なことをお伝えしていきますね。

エコハウスとは

「エコな家」と聞くと、「エコ」つまり経済を意味するエコノミー(economy)の「エコ」の意味合いでイメージする人が多いかもしれません。

冷暖房費がかからない、コストがかからないという意味合いで、エコハウスという言葉が使われていることも多いように思います。

「高断熱高気密住宅=エコハウス」と捉えられているということですね。ですが、実は「エコハウス」の意味は違います。

まず「エコ」の意味ですが、次のようになります。

  • 「エコ」とは、生態学・自然環境を意味する「エコロジー(ecology)」という英語の略称
  • 生物と地球の相互関係、人間の生産活動や生活が地球環境にどのような影響を及ぼすのかを研究する学問から始まる
  • 現在では「地球環境にやさしい」「公害を出さない」「体に良い」といった意味になっている

次に「エコハウス」とは、環境省で次のように定義されています。

地域の気候風土や敷地の条件、住まい方に応じて自然エネルギーが最大限に活かされることと、さらに身近に手に入る地域の材料を使うなど、環境に負担をかけない方法で建てられることがエコハウスの基本となります。

参考:環境省エコハウスモデル事業「エコハウスとは」

一般的には「エコハウス」という言葉は、単なる「省エネ住宅」的な意味合いで使われていることが多いように感じます。「エコハウス」の名前が付いた住宅会社さんもたくさんありますね。

ちゃんと言葉の意味を考えると、エコハウスとは「自然エネルギーを活用し」「地産地消で」「地球環境にやさしく」「健康によい」住宅という意味なんですね。

しかし世の中には「エコハウス」の名前を語ってはいるものの、実際には「エコハウス」になっていない住宅も多数存在しています。

高性能とは言えず、自然エネルギーを考慮せずに新建材を多用している住宅も「エコハウス」と呼ばれていたりします。

では本当の「エコハウス」とは、どんな家なのでしょうか?

エコハウスはどんな家?

本当の「エコハウス」について、もう少し考えていきます。

数年前、建築家の堀部安嗣さんの講演で「エコ住宅」についてのお話がありました。その講演で、堀部さんから、「エコ住宅」の定義を下記のように話されていました。

・あるものを活かす

・自然の摂理に従う

・その土地で手に入るものでつくる

・無駄を出さない

・コストをかけない

・特殊な技術でつくらない

私の考えは、建築家の堀部安嗣さんのお考えと同じです。深く共感し、私自身の家づくりにおける理念も修正しました。

エコハウスの定義について、くわしく解説していきますね。

あるものを活かす

「あるものを活かす」とは、ないものから作るのではなく、現在あるものをできるだけ活かしていくことです。

つまり新築を前提にするのではなく、まずは既存住宅のリノベーションなどから考えていくことも大事になります。

新築の場合でも、その土地にあるものや建て替え前の住宅で使われていたものを再利用できるのであれば、それを活かしていくことをまずは考えるべきでしょう。

私は建て替えの場合には、必ず古い家を内見させてもらい、使える材がないかを確認しています。

古い家では貼物ではなく無垢材が使われている場合も多く、階段板や天井板、床柱や床框、玄関框などに無垢材を再利用しています。

お庭の庭木や庭石、踏み石や漬物容器なども再利用したりしています。「使えるものは使う」という考えはとても重要です。

せっかく使えるものをコストやエネルギーを使用して廃棄するなんて、本当にもったいないです。再利用できれば、イニシャルコストも抑えられます。

自然の摂理に従う

そもそも日本の古い家屋は自然の摂理に従った住宅でした。雨を避けるために大きな屋根に軒を深くし、地震に強くするために柱を多くし、改修がしやすいように土壁など自然素材だけで造られた家だったのです。

それが現代では、軒がなく、柱を少なくし、新建材を多用した家づくりがされています。

現在の住宅は「自然の摂理」に逆らった建て方をしていることがとても多いように感じます。

雨は上から下に流れるのに、それを堰き止めるようなことをしたり、気持ちよい風が吹くのに、その風を無視した設計をしたりしている家が増えているのです。

まずは自然の摂理を見つめることで、環境への負担はかなり改善されるのではないでしょうか。

その土地で手に入るものでつくる

「その土地で手に入るものでつくる」ですが、現代の日本ではかなり難しくなってきています。

生産地と消費地とで分けて考えられて都市形成が進んできてしまったため、消費地で地物の材料を手に入れることはとても難しいのです。

それでも極力「その土地」で手に入るものを優先的に使っていく家づくりが、今一度必要だと思います。

無駄を出さない

家は、真物(まもの)と呼ばれる材料だけで造られていることがほとんどです。

石膏ボードも構造用合板も板状のものは、3×6と呼ばれる910mm×1820mmの板で現場に運ばれます。

それを大工さんが加工して、現場に合わせて設置しますが、真四角の建物はないため、どうしても端材が発生します。

その端材を組み合わせていくことも可能ではありますが、耐震面、見栄え、効率などを考えると、真物での施工が一般的です。

これからは、ますます材料不足が深刻化してくるため、「無駄を出さない」ことは建築業界で今後一層見直されてくるテーマになるでしょう。

コストをかけない

コストをかけたからいい家になる訳ではありません。「コストをかけない」のも大事なことです。

「コストをかけない」ということは、つまりは「頭を使う」ことだと思います。

何も工夫をせずに作るのではなく、頭を使ってコストを抑える方法を考えて、極力コストをかけないこと、それがエコであると思います。

特殊な技術でつくらない

最後の「特殊な技術でつくらない」も大事なことです。

近代化によって、新しい技術や工法や設備が生まれてきました。

新しい技術や工法や設備はとても重要ですが、「その技術しかダメ」「その工法でないとダメ」「その設備でないとダメ」という作り方では、将来的に困るでしょう。

広く一般的になった技術や工法や設備であれば、代替もあります。

あまりにも特殊な技術だと、将来的に技術に必要なものが手に入らず「直せない」という事態になるのです。

特殊なものは「長く使えない」というデメリットが大きいことを認識した上で使うのが重要ですね。

パッシブデザインの重要性

エコハウスを考えるとき、パッシブデザインの考え方も大きな意味を持ちます。

パッシブデザインとは太陽の熱や光、風といった自然のエネルギーを、機械を使わずに建物に利用する設計手法

前述した建築家の堀部さんは、著書「住まいの基本を考える」の中で、パッシブデザインについて、少し違った言い回しをされています。

「パッシブデザインとは、なるべく少ない労力でその働きを効果的に引き出していくもの」だと解説しているのです。

最適化された結果が、自然エネルギーの利用ということですね。

太陽の光が降り注いでいるなら取り込み、風が吹いているなら取り込み、雨が降るなら地面に流すという自然の摂理を活かした考え方です。

すべてに関して合理的な考え方が大事になります。近年の家づくりは合理的とは言えず、作り手側にとって都合のよい家づくりが多くなっているのではないでしょうか。

安く早く作るために、設計を省き、材料を省き、設備を多用した家づくりになっています。それは、無理を隠すためのアクティブな作業が多くなっているとも言えるでしょう。

本当のエコハウスとは

私は本当のエコな住宅とは、お金や労力をかけて、設備に頼った住宅ではなく、無理をせずコストをかけずに、最小限の労力で最大の効果を得る住宅であると考えています。

建築家の堀部さんも著書の中で「アクティブな建築デザインは無駄な費用と労力を要する」とも書かれています。

現在は高性能住宅と混同されがちなエコハウスですが、家づくりを行う際には、本当の意味の「エコハウス」となるように気にして頂けることを願います。


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