家づくり

中古の築浅住宅は失敗する?買ったばかりの家を売る理由を解説

新規でお問合せいただくお客様から、最近頻繁に伺う話があります。それは中古住宅についてです。

「土地探しからの新築を検討しているが、材料価格が高くて予算が合わないので、中古戸建を購入してリフォームすることを検討している」という内容が本当に多いです。

相談の中には「気になる築浅の住宅があるので見て欲しい」というものもあります。「気になる物件は建売ですか?」とお伺いすると、ほとんどが建売住宅です。

築浅で中古で売りに出ている住宅で、ハウスメーカーや工務店が施工した住宅はあまり聞かず、流通している住宅はほとんどが建売の住宅です。

今回は、買ったばかりの家を売る理由や築浅物件のデメリットをお話したいと思います。

買ったばかりの家を売る理由

あすなろ建築工房は断熱性能向上リフォームも得意としていることから、断熱リフォーム工事のご依頼を頂くことがとても多いです。

最近、築浅の建売住宅をご購入されてお住まいになっている方からのリフォーム工事のお問い合わせが増えていますが、ほとんど「暑さと寒さが厳しい」という内容です。

暑さと寒さが厳しい

ご連絡頂くのは「〇年前に〇町に建売の3階建て住宅を購入しました。冬は1階部分がとにかく寒く、夏は3階部分がとにかく暑いです。断熱改修をしたいと思います。」という内容です。

最短では「住み始めて一年」という方もいらっしゃいました。

実際にお伺いしてみると、玄関から個室に掛けて「パズルマット」と呼ばれる大きなジグソーパズルみたいなフワフワしたマットが敷きならべてあるお家がとても多いです。

「1階はスリッパを履いていても底冷えしてしまうので仕方なくマットを敷いています」というのです。

できる範囲での工夫をしても、「この部屋で寝ていると余りの寒さに耳が痛くなってしまいます」とおっしゃいます。

また3階の部屋は、夏に冷房の効きがとても悪く、冷房も付けっ放しにしており、冷房代が月3万円もかかるという話もよく聞きます。

あまりに暑いので、夏は子供たちは2階のリビングに布団を敷いて寝ていたり、3階建ての家ですが、ほぼ2階だけで生活されている方もいらっしゃったりします。

2階のリビングに2段ベッドを置いて、そこを子供部屋にし、リビングなしの生活です。結果として、3階は完全な物置空間になり、1階は主寝室として寝るだけの部屋となっていました。

皆さん口をそろえて「とにかく冬の寒さと夏の暑さで困っています」とおっしゃります。

そこで、断熱性能向上リフォームをご希望されているのですが、断熱改修工事というものは、実はとても難しい工事なんです。

断熱改修工事も難しい

既存の内壁の上から貼り付ける後付けの断熱パネルというリフォーム部材が販売されてはいますが、効果の程は知れています。費用対効果がとても悪いです。

外壁の外から断熱材付きの外装材を貼り付けて、美観も断熱も同時にリフォームするという商品もありますが、効果の程は知れています。

ほとんど断熱には効きません。気密性能が少し上がり、壁内の気流が起きにくくなるため、すこし暖かく感じる程度です。

逆に解体時に廃棄物が増えるため、十数年経った後の解体の際のコストアップに悩むことになります。

断熱材が金属パネルに挟まって成型されているので、廃棄の際には分別することが困難となり、廃棄費用がかさむのです。

負の遺産を後世に残すことになるので、私はお勧めしない(絶対にやらない)工事です。

既存住宅で、断熱気密性能をしっかりと効果のある所まで向上させるには、外壁の内側の壁のボードを剥がし、壁と屋根と床の断熱材を再充填させる必要があります。

一部の部屋だけ性能を向上させてしまうと、断熱性能の差が生じて断熱改修工事をしていないお部屋の部分に負荷がかかり、壁の内部結露などを生じさせるリスクがあります。

断熱改修工事を行うには、弱い部分を作らないようにしていく必要があり、そのためには正しい知識と丁寧な施工が必要となります。正しい施工計画が必要なのです。

結果として高気密高断熱と言えるまで性能を向上させる改修工事を行うには、その辺のリフォーム工事専門店では実は手に負えない工事となります。

断熱改修をしっかりと行う場合、室内側の壁や天井や床を剥がすことになり、仕上げに再利用はできず、張り替えとなってしまいます。

内部の壁と天井と床の仕上げを剥がして断熱材を入れ替えるには、外壁と屋根以外については「スケルトン」と呼ばれる状態に近いところまで剥がすことになります。

外壁側に設置されているキッチンやトイレや浴室などの設備器具も外す必要が出てきます。

真面目に断熱性能向上リフォームを行うとなると、結局は、建売住宅を新築する場合と同じくらいの金額が必要になるのです。

リフォーム費用が高すぎて売却を選択

「200万円位でなんとかなるかと思っていました」という方も多いのですが、効果を感じられる断熱工事を行うとなると、実は1000万円前後の費用が必要となってきます。

結果この現実を知ることになり、「1000万円かけてリフォームはできない」と諦めることになります。

実は「1000万円かけてまでリフォームはできないけれど、このまま我慢して生活もしたくない。この家を売って他で建てよう。」という方が多くいらっしゃいます。

このように築浅の建売住宅の物件が市場に出てきています。ある意味、第二の被害者を発生させているのです。

「転勤になった」「ローンが払えなくなった」「離婚した」などの理由で手放す方もいらっしゃるでしょうが、実はかなり少数派です。

もしも「築浅の住宅を買って、好きなようにリフォームすれば安く済むんじゃないか?」なんて思っている方がいらっしゃいましたら、大きな間違いです。

住んでから必ず後悔することになりますので、お気を付けください。

 築浅物件のデメリット

築浅物件には、断熱性能の問題以外のデメリットも存在します。それは、「売ろうとしても売れない」ことです。

建売住宅の寿命は20年か30年か、それくらいです。

しっかりと維持管理をしていれば、プラス20年ほど住み続けられるかもしれませんが、本当にボロボロになるまで頑張っても50年ではないかと思います(かなり難しいでしょうが)。

買ったときは30歳台でも、30年後は60歳台になっています。

小さい家では住みにくく、夏は暑くて冬は寒い家に住み続けると、30年後には身体も堪えてきます。急な勾配の階段も相当危険です。

「さすがにこのまま住み続けられない」と、売却を考えるようになります。

築後2年~3年位なら、建売住宅のような小さな家の需要もあるでしょうが、30年後となると問題です。

いざ「土地を売ろう」と思っても簡単には売れません。20年後か30年後に、その小さな土地のニーズがあるのかどうか分かりません。

自動運転の車が当然になる時代がもうすぐやってきます。ボタン一つで仕事場や学校に行けるため、駅から近くに住む必要性も相当低くなっているのないでしょうか。

そして、リモートワークが継続され、職場に通う必要性も減り、毎朝通勤電車に揺られる必要性も今以上になくなるかもしれません。

人々のニーズは、郊外の環境が豊かなところでの「ワーケーション」みたいな環境が当たり前になっているかもしれません。

そんな時代に「狭小地」とよばれる小さな土地を買おうとする人がどれだけいるのでしょうか?

小さなままでは売れないので、お隣などとくっつけて「合筆」して、売却するしかありません。しかし複数の土地を一つにする「合筆」は、実はとても難しいのです。

お隣同士が同じタイミングで「売りたい」となれば可能ですが、タイミングが合わなければ、合筆しての売却は難しいものとなります。

お隣同士に同じタイミングで「売りたい」と思う確率はかなり低いですよね。

もともと1軒のお家を小さく分割して販売された土地は、今後の不動産価値については相当低くなることを覚悟しておく必要があります。

狭小地というものは、このようなリスクを伴っています。

「築浅」つまり新築されてからあまり年数が経っていない住宅のリスクについてお話しました。

では「築古」つまり建売住宅のようなローコストな建て方ではなく、ローコスト住宅が建てられる以前の「築年数が40年、50年経った住宅」にも大きな問題があります。

住宅によって当たりハズレがとても大きく、ハズレの確率がとても高いので要注意です。

築浅の中古住宅を購入してリフォームを考えるのは、リスクが高いことを覚えておいて頂きたいと思います。


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