家づくり

雨漏りする家の特徴とは?原因は軒がないこと

長年、家づくりの仕事をしていて、ご近所の方も含めてメンテナンスでお伺いすると「雨漏りしているお家」には、ある一定の特徴があることに気が付きます。

雨漏りする家の特徴としては、軒がない、複雑な屋根形状、バルコニーがあるという3点があげられます。最近のデザイナーズ住宅の増加も大きく関連しています。

今回は雨漏りする家の特徴、軒がない家の問題点などをお話したいと思います。

雨漏りが起こりやすい家の特徴

雨漏りが起こりやすい家の特徴は3つあげられます。

・軒が無い・複雑な屋根形状をしている

・バルコニーがある

複雑な屋根形状をした家がとても多いと感じています。

狭い土地に無理やり容積率、建蔽率目一杯に計画するため、北側斜線や道路斜線、隣地斜線などの高さ制限に当たり、屋根の形状が複雑になっています。

複雑な屋根は雨漏りのリスクが高まるため、分別のある設計者は屋根が複雑にならないこと、斜線にかかってしまわないことを考え、階の高さも低く抑えるなどの工夫をします。

複雑な屋根になる場合は、ディテールと呼ばれる「収まり」をしっかり考える必要がありますが、この検討をすべて屋根業者に任せてしまっていることがほとんどでしょう。

複雑な屋根になり、勾配方向の違う屋根と屋根の取り合いが出てくると、技術の高い板金職人が技術を駆使して、雨漏りしないような「捨て板金」と呼ばれる部材を施す必要があります。

ただ、ローコストがゆえに実際には経験不足な職人が手をかけていることが多いように思います。

また雨漏りの原因に多いのが「バルコニー」です。バルコニーはシート防水やFRP防水など、「防水」という技術が必要なのですが、施工には技術も必要となります。

窓周りやドレンと呼ばれる排水口周りでの漏水がとても多いです。「防水」については定期的に塗装を行うなどのメンテナンスが必須となり、メンテナンスを怠ると雨漏りに繋がります。

「デザイナー住宅」と呼ばれるお家には、庇もないむき出しのバルコニーが突き出ている例がとても多いです。バルコニー下に、1階のお部屋がある例も時折見かけます。

このようなお家は、定期的なバルコニー防水のメンテナンスとこまめに排水ドレインの掃除を行う必要があります。

分別のある設計者は「防水バルコニーを作らない」という人も多く、あすなろ建築工房でも防水が必要となるバルコニーは設置しないようにしています。

以上のように雨漏りが起こりやすい家の特徴は軒がない、複雑な屋根形状、バルコニーがあるという3点です。

なぜ雨漏りしやすい住宅が増加したのでしょうか。背景を解説します。

軒がない家が増加

日本では、昔から軒の深い住宅が建てられてきました。深い軒は、長い梅雨時期の雨から外壁と窓を守り、夏の日差しを遮る役目があります。

それが「デザイン」の名のもとに、軒がない家が増えています。「軒なし住宅」の広がりは、コストダウンによるところが大きいでしょう。

軒がなければ、屋根の材料も下地の材料の軒裏の材料も必要ないため、コストを抑えられます。

建売住宅やローコスト系パワービルダーは「デザイナーズ住宅」を語り、費用を抑えた「軒のない家」を建てているのが現状です。

軒がない家は住まいとしては何も良いことがないため、見かけるたびにやるせない思いになってしまいます。軒のない家の問題点とはいったい何でしょうか。

軒の出がない住宅の問題とは?

軒がない住宅では、下記のような問題が生じます。

①夏の日射が窓に差すため、冷房負荷が大きくなる。②雨水が窓に直接かかるため、窓周りからの浸水(雨漏り)の可能性が高くなる。

③雨の日の出入りの際に、雨が差し込んでしまう。

 掃き出し窓の場合はフローリングや下地が傷みやすい。

④外壁にも直接日射が差し込み、外壁の劣化も早くなる。

 (メンテナンスサイクルが短くなる)

⑤にわか雨が降ると洗濯物がびしょ濡れになる。

不具合が生じたとしても「軒がない方がかっこいい」と考える方はいいでしょうが、軒をなくしていいことなんて何もありません。

軒が無いと上記のような問題が生じるため、どうしても軒をなくしたい場合には、5つほど工夫が必要になります。

①軒以外の日射を遮蔽するもの(タープ、グリーンカーテン、スダレ)などを設ける②窓周りの水の流れを考慮した収まりにする

③窓上に小さな庇を設ける

④サイディングなどではなく、コーキング目地が不要な外壁材(ガルバリウム鋼板小波板など)を使用する

⑤洗濯物は室内干しと割り切る

残念ながら、これらの工夫を一切せずに軒をなくしている住宅も多いのです。

夢のマイホームを建てる際に、「カッコいい家が欲しい」という方はもちろん多いです。ただ、雨漏りのリスクが生じたり、住みにくさに直結したりするのであれば、話は別でしょう。

住宅業界に長く携わっていると、住んでから1年~2年の家に対して不満を持つ方からリフォーム工事の依頼を受けることも多いです。

「洗濯物を干したまま外出することが出来ない」

「冬は寒くて1階では過ごせない」

「夏は暑くて2階では寝られない」

「締切ったままだと灼熱地獄となってしまうため、エアコンを掛けたままで電気代が高すぎる」

「築5年で外壁のコーキングが切れて、メンテナンスが必要となった」

などなど。

築浅で中古として売りに出ている物件の場合、「上記のような問題があり、住み替えのために売りに出されている」と思った方がよいでしょう。

「デザイン」とは見た目だけの格好良さではなく、機能も有したものでなくてはならないと思います。そこまで配慮することが「デザインである」と私は習ってきました。

デザインやコスト削減ばかりを重視した結果、雨漏りが増えるというデータもあります。

瑕疵担保責任保険の原因は?

新築住宅には瑕疵担保責任があり、完成してから10年間は雨漏りと構造的な不具合は保証されています。

実は「瑕疵担保責任保険」で、保険金を受給した事例のほとんどが『雨漏り』によるものです。

保険事故の発生部位

1号保険及び新築2号保険
  • 雨水    93%
  • 構造      7%
2号保険(新築2号保険除く)
  • 雨水  81%
  • 構造    7%
  • その他 12%

参照:国土交通省 住宅瑕疵担保履行制度の現状51P

1号保険と2号保険の違い

1号保険 一般的に建設業者が入る保険で、建設業者や宅建業者が加入義務を負っている保険。
2号保険 1号保険外となる場合のもので、売主に資力確保義務がない場合に加入する。任意に入る保険で、具体的な対象は建設業許可のない人が建てる家。

構造による不具合での保険金支払い事例が極端に少なく、8割以上が雨漏りによるものです。

保険を受給される会社のほとんどは、建売業者かパワービルダーと呼ばれるローコストビルダーです。理由は軒の出の小さい「軒ゼロ住宅」や片流れ屋根の事例が多いためです。

SAREX(住環境価値向上事業協同組合)で、我々工務店メンバーは瑕疵担保責任保険が適用になるような事例はなく、保険料について疑問の声が上がったことがありました。

あすなろ建築工房も創業して15年経ちますが、保険を適用するような雨漏り事故はありません。

雨漏りしないように設計し、しっかり施工し、危険な収まりは避けるようにしていれば、当然のことです。

瑕疵担保責任保険は、いい加減な施工をしている業者のための救済にしかなっておらず、結果として建て主が余計な費用を払うことになってしまっています。

私が就職して間もないころ、ビルの外壁の設計を教わった際に大先輩から「雨は上から降ると思うな」と習いました。

「通常の雨ではそう簡単には雨漏りは起きない。台風など強風が伴う時に雨漏りする。強風時は下からの吹き上げがあるので、その際に雨漏りする。雨が下から降ると思って設計しなさい。」と。

これは住宅の屋根でも同じです。下から吹き上げるような風を伴う雨の際にも、1次防水、2次防水という形で、リスクを軽減するように考えて屋根を収める必要があります。

我々は将来に渡ってもお家に対して責任を持たなければなりませんが、残念ながら世間一般的には「売りっぱなし」「建てたら後は知らない」という住宅会社があるのも事実です。

当社では、将来お住まいになる方が困らないように、リスクを軽減するように試行錯誤して、将来に渡って雨漏りが起きないように考えて家づくりをしています。

家族が安心して長く住まえる家にするためにも、無理な冒険はせずに、安全な家づくりにしていただければと思います。


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