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価格高騰時代の秘訣は【家を小さく造る】

土地高騰の時代である現在、家を建てたいけれど土地も建築資材も高騰して、中古住宅や建売住宅しかないと考えるようになった方も多いでしょう。

ですが、建売住宅やローコスト住宅の購入や中古住宅のリフォームに関して、私は反対であるというスタンスです。

私のおすすめは「家を小さく造ること」。

今回のコラムでは、価格高騰時代に家を小さく造るための具体的な方法をお伝えしたいと思います。

最初に「その家に何年住み続けたいのか」を考える

まず、皆様にお伝えしていることは「何年住み続けたいのかを考えて家づくりをする」ことです。

「30年住めればいい」という方は、イニシャルコストを抑えて、ダマしダマし住み続けることでもよいと思います。

一方で「30歳台で子育てが終わってからも夫婦で施設に入るまでは住み続けたい」という方は、60年以上の耐久性を持たせないといけないので、しっかりと基本性能を確保した家が必要になります。

50年以上住み続けるには、それなりのポテンシャルを持ち合わせていなければなりません。

50年経った家は、基本性能がしっかりあって存在している家とボロボロの状態で壊されなかっただけで存在している家のその差がはっきりと分かるようになります。

「築50年の家」で検索してみると、基本性能がしっかりしている家とボロボロの家の差が良く分かりますよ。

50年という月日は相当な年月です。この時代は高度経済成長の真っただ中で、まだ日本も貧しかった時代です。

欧米諸国に追いつけ追い越せと日本に活気があった時代で、都心部周辺にどんどん住宅が建っていきました。

ハウスメーカーや新建材と呼ばれる建材ができたのもこの時代で、家の性能も様々でした。

そもそも50年も持たない性能で建てられている家も多く、当時家を建てられた人も「50年持たせたい」と考えてはいなかったでしょう。

材料も工法も知識も、建てられた状況も現在とは違いますが、残っている家を見てみると、基本性能がしっかりしている上で、お手入れがされていた家が残されていると思います。

長く住むには基本性能の確保が大事

上記のように、「基本性能」をしっかりと確保したお家にしておくことで、長く住み続けられます。

ではその「基本性能」とは何でしょうか。それは、「耐震性能」と「長く使い続けられる材料」です。

耐震性能が高くなければ、長い年月の中で起こった大きな地震で損傷してしまっている可能性があります。

また基本的に改修に耐えるだけの性能がないと、途中でリフォーム工事もできなかったでしょう。

また新建材で造られていると、腐ったり剥がれたり、途中で雨漏りや腐朽などの被害に合っている可能性が高くなります。

補修されずにみすぼらしい状況だと耐えられなくなり、途中で建て替えられてしまいます。

私の経験値での話ですが、50年前に新建材で造られた家は現在ほとんど残っていないように思います。

現在残っているのはどちらかというと地元の工務店で大工さんが建てており、新建材を使っていない家です。

断熱性能も大事ですが、まずは「耐震性能」「長く使い続けることが出来る材料」が優先です。

「耐震性能」「長く使い続けることが出来る材料」がなければ、どんなに断熱性能がよくても長く住めないからです。

一方、これからの時代には「断熱性能」は大事です。

エネルギー価格が日に日に高くなってきているため、資産維持のためにも必須条件になってくるでしょう。

30歳台で家を手に入れたならば、夫婦のどちらかが施設に入るまでと考えると50年では足りません。

60年~70年に渡って住み続けることになる可能性も十分にあります。

これから「50年以上住み続ける」目的で家を建てられるのであれば、「耐震性能」「長く使い続けることが出来る材料」「断熱性能」の3つをまずは確保する必要があります。

家の大きさは30坪もいらない!

「耐震性能」「長く使い続けることが出来る材料」「断熱性能」の3つを有した上で、次に大事なことは、家の大きさです。

住宅金融支援機構の「2022年度フラット35利用者調査」によると、2022年の注文住宅の全国平均の床面積は122.8㎡(37坪)だそうです。

地域性もあるでしょうが37坪の大きさの家は、私にとっては相当に大きな家のイメージです。

高齢の夫婦になると、この大きさを維持していくのは難しくなります。

子育てしている時は「大きな家」も住みやすいですが、夫婦二人で大きな家を維持していくのは後が大変です。

維持メンテナンスができずに、雨漏りや外壁のツタが絡まっているのを放置したまま、お住まいになられている家もよく見かけます。

雨戸も閉めっ放しで、風通しも出来ていないので湿気が家の中に溜まり、腐朽菌やカビが発生して朽ちてしまっている家もたくさん見てきました。

ご夫婦が60歳~70歳台の間に、次世代、つまり子世帯に住み継いで頂かないと、健全な状態での維持は難しくなるでしょう。

ご夫婦二人で、無理せずお手入れがを継続出来るのは30坪が限度と考えています。

維持管理は家の大きさが小さければ小さいほど楽ですが、子育て中は家財も多く、家族のプライバシーも確保する必要があるため、それなりの床面積も必要となるでしょう。

私が考える、4人家族にとって最適な面積は27坪です。

27坪あれば、それぞれのプライバシー空間とほどよい家族の団らんのスペースを確保できます。

もちろん子供部屋は3畳~4畳程度と決して広くはないため、十分なスペースを取れる造りにする必要があります。子供部屋の大きさについてはまた別の機会でお話したいと思います。

最近はさらに工夫を重ねて、長く住むための基本性能を確保した、5人家族用の24坪の家も設計しています。

小さな家は、小さな分だけ建築費を抑えられ、付随して税金も安くなります。

気積、表面積も小さくなるので、暖冷房のエネルギーも少なくて済みます。

外壁や屋根の面積も小さいので、将来のメンテナンスコストも少なくなり、良いこと揃いです。

現代の土地価格高騰、材料価格高騰、人件費高騰での住宅価格が高くなってしまっている時代においての家づくりにおいては「小さく造る」が一番の対策ではないでしょうか。

小さな家を造るには

しかし、ここで大きな問題があります。

「小さな家」は、大手ビルダーさんやハウスメーカーさんではできず、設計事務所や工務店に依頼するしか方法はありません。

けっしてポジショントークをしたいわけではありませんが…。

ハウスメーカーさんやビルダーさんは、建材をメーカー製品の組み合わせでしか造ることが出来ないからです。

規格にあった製品を組み合わせていくしかないため、小さな間取りの家にはハマりません。

無理にメーカー製品を使って小さな家を造ってしまうと、ちょっと前にメルマガでも紹介した「住んでから後悔する家」になってしまいます。

「小さな家」にするにはこのメーカー製品を使わずに、建具屋さんや家具屋さんで造った特注サイズにする必要があります。

空間が小さいので小さなサイズでいろいろと作らないと、使いにくく住みにくい家になってしまいます。

「小さな家」には、さらに大事なことがあります。

30坪を下回る「小さな家」を設計するには「設計力」が必要になり、特に25坪以下ともなると実際の経験も必要になってきます。

ここが難しい所で、見よう見まねで設計したとしても、居心地や使い勝手が良い家にならないのです。

狭い家の場合には、ある特殊な設計の技術が隠されているからです。

狭い家に必要な特殊の設計

まずは「無駄のない間取り」です。とにかく「廊下」を作らないように設計します。

しかしこれがとにかく難しい。

玄関の位置は道路と駐車場の関係で必然的に場所が決まってきます。

リビングダイニングは土地に置いて一番居心地のよいところに置くようにします。

キッチンや洗面所の諸室を配置してくことになるのですが、ここからが腕の見せ所。

小さな家の設計が上手な人は、巧みに廊下を排除して諸室を上手につなげていきます。

そして小さな家の設計には、他にもいろいろと設計の技術が盛り込まれています。

「目線の抜け」や「使用する材料の選択」などもあります。

狭く見せないように目線を誘導し、入角の角を視覚的に消すように材料や収まりで工夫しています。

他にも照明器具なども駆使して広く見せるようにしたり、小さな空間に似合う器具を選定したりすることも大事です。

この設計技術は簡単に学べません。

上手な建築家の作品を実際に見て、測ったりして、実体験を通して学ばなければ習得できない技術です。

小さな家を設計するには、いろいろなところで学ばないとできないのです。

幸い、現代は学ぶ場もたくさんありますので、この技術を習得した設計者はたくさんいます。

しかし、新建材で家を造っているハウスメーカーやビルダーには居ません。

技術を習得した技術者は、自分たちの技術を活かせる場に所属しています。

それが設計事務所や地域の工務店です。

価格高騰の時代に理想の家を手に入れる秘訣とは『お住まいの地域で「小さな家」を設計できる設計者を見つけること』になるかと思います。

是非参考にしていただけたらと思います。


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