家づくりにホンモノの自然素材が良い理由
私は日頃からいろいろな場でお話させて頂いていますが、自然素材というものは気温や湿度などによって日々変化し、その表情が変わります。
住む人も毎日同じ体調ではなく、調子のよい日もあれば悪い日もあります。
いろんな変化に柔軟に対応してくれるのが自然素材です。
当社では、自然素材にこだわりを持って家づくりをしていますが、今回はホンモノの自然素材が良い理由を解説していきます。
自然素材の魅力
自然素材は外の気温や湿度の変化に緩やかに反応し、人に伝わるのも緩やかであるため、ホンモノの自然素材は、人に優しい素材と言えると思います。
木々が日々表情を変えるように、自然にあるものはすべて日々表情が変わります。
もし、自然の木々の中に人工物があったとしたら、どうしても目立ってしまいます。
自然に溶け込みやすいのは自然のものなのです。
日々変化する樹木と同じように、床にある石も日々変化し、表情を変えることで、毎朝、毎晩、楽しませてくれます。
家づくりにおいて「自然素材」を好む方も多いのですが、外構にまで興味を持っている方は少ないように感じます。
外構に使うものに関しても、是非自然の溶け込む素材を選んでいただきたいと思います。
ウッドデッキも同じです。
木材は内部にたくさんの気泡を持っているので、熱を伝えにくい性質があります。
デッキの床に木材が使われるのは、紫外線に強く、熱を伝えにくいので、真夏でもウッドデッキ上で過ごせるからです。
お盆休み中は長雨で、びしょ濡れになり激しい温度差があったにもかかわらず、涼しい顔して床を支えていてくれています。
仕上げが木材でなく、樹脂製デッキだったらどうなるでしょう。
熱くて、大やけどをしてしまうため、デッキの上に乗れません。
紫外線に弱いものなので、劣化が進み、長く持たせることはできません。
漆喰や珪藻土の壁が調湿性に優れていることは、皆さんご承知のとおりです。
床や壁や天井で使われているフローリングなどの木材も同じで、調湿機能に優れています。
ホンモノの自然素材は一年、一日の温度や湿度の変化に緩やかに変化し、そこに住む人や動物の環境を整えてくれます。
居心地の良い家にするためには、断熱性能や気密性能も大事ですが、使う素材もとても大事です。
家づくりに自然素材を使うときの注意点
自然素材を使う場合には、注意も必要です。
「湿度のコントロールをしてくれる」ということは、湿気に敏感ということです。
室内の湿度が高くなれば吸湿し、低くなれば放湿します。
吸湿すれば膨張し、放湿すれば収縮します。
写真のように、継ぎ目などでは隙間が生じてきます。
湿度の高い夏は、隙間が小さくなり、湿度の低い冬は、隙間が大きくなります。
フローリングのつなぎ目である「実(さね)」の部分の隙間も同じです。
気候や温度変化によって日々変化するからこそ、飽きのこない家となるのです。
素材を大事に取り入れてくれる職人の手も必要となります。
ホンモノの自然素材を扱うには素材のクセを見抜いて適材適所に使う必要があり、知恵と経験と実現するための技術が必要となります。
変化に追随できるように、ホゾが細工されていたり、裏側に板が充てたり、工夫されています。
上の画像は上がり框との取り合い部なのですが、熟練した大工さんが框に溝をついてフローリングが勘合するように細工しています。
框とフローリングの反りを抑える効果があるほか、乾燥の時期に空いてしまった際に、下地が見えないようにしています。
完成した時に見えなくなる部分では、気配りのある仕事が大事で、簡単そうに見えて、なかなか難しいものです。
知恵と経験と技術を必要とするので、誰でも出来る仕事ではありません。普段から自然素材に慣れ親しんでいる職人でなければできないのです。
ハウスメーカーさんなどが一般的に用いている建材は新建材と呼ばれる工業製品です。
温度変化や湿度変化に対して、動きが少なく、ひび割れや空きなどが生じない材料です。
木目のように見えるけど、印刷されたシートが貼られています。
簡単に言ってしまうとカラーボックスと同じです。
量産の住宅は、床の框もフローリングも扉の枠も、扉自体も、家具も何もかもが、木目が印刷されたシートが貼られたカラーボックスと同じもので作られています。
プリントした木目シートが貼ってあるので、遠目で見たら木材に見えますが、その差は使ってみると歴然です。
ハウスメーカーでつくられた家に後から造作家具を造りつける工事を依頼されることがあるのですが、そのような場合は、自然素材での家具設置を勧めることはしません。
新建材で出来上がった空間に自然素材のものが入り込むと違和感が生じます。
最初は気にならないかもしれませんが、数か月、数年と経つ間に、その差を感じるようになります。
プリントされた新建材は表面の木目が変わることはなく、表面が汚れて汚れているのと対照的に、自然素材の材は、経年で色に深みが増し、味わいが深くなっていきます。
この劣化と経年美化が混在すると違和感を感じるようになります。
置いただけでは分からないかも知れませんが、使っていくと感じてしまう差になるのです。
そして耐用年数の違いも問題となります。
カラーボックスは永遠に使うものではありませんよね。
ハリボテの材料で作る家と、ホンモノの木材を削りだして作られる家とどちらが大事にされるでしょうか。
無垢の木材で家具を作ることは、素人にはなかなか難しいものです。
家づくりも同じで、工場で作られパーツ化された新建材部材を取り付けるだけの仕事であれば、熟練した大工でなくても可能です。
材料の温度変化も湿度変化も考える必要がないですし、見えない部分に気を遣う必要もありません。
見えている部分の材料の寿命がそのまま、その家具や床の寿命となります。
作る人たちが素材を理解し、丁寧に作ってくれる家であれば、変化にも対応でき、長く使い続けることができます。
職人さんが無垢の木材で作った棚であれば、「誰か貰ってくれないかな」「補修して使えないかな」と考えたりするのではないでしょうか。
家とは、そこに住む人たちの健康や生活の礎となるものですから、心のこもってないハコの中では、豊かな生活は送ることが難しいです。
家は、見た目がみすぼらしくなり飽きたからと言って、簡単に捨てられません。
1日で作業が終わってしまうようなビニルクロスの仕上げではなく、職人が丁寧に塗り込んでいく塗り壁との差は大きいです。
職人の手の跡が残る壁は、味わい深く、何年経っても見ていて飽きず、愛着が湧いてきますよ。
ホンモノの自然素材に囲まれた生活を
ホンモノの自然材料に囲まれた生活。
そんな空間で過ごすことで、日々の幸せを感じることができます。
手すりや扉やテーブルカウンターなど日々手に触れるもの、それぞれに味わいのある肌の温もりを感じることができる生活です。
そこで育つ子供たちにとっても、豊かな素材に囲まれて育つことで、豊かな心が育つと考えています。
自然素材の優位性を研究している団体もあります。
工務店が集まって九州大学と共同研究もしているんですよ。
|
上記のように、興味深い研究がされています。
ホンモノの自然素材を使って家づくりをするには、経験と知識と技術が必要となります。
最近は「自然素材を使って家づくりをしています」というだけで、ハウスメーカーと差別化できるため、安易に「自然素材住宅」と言っている住宅会社さんも多くなったと感じます。
ホンモノの自然素材を用いた住宅は、材料も手間もかかるものなので、全体の価格も高くはなってしまいます。
数十年住み続けていく住宅において、メンテナンスや修繕費用も含めたライフサイクルコストで考えると、最初にコストがかかったとしても結果として総費用を抑えられます。
ぜひホンモノの材料での家づくりを実践していただければと思います。
他の記事をみる