コスト

家づくりの予算がオーバーしたときの進め方

このところ材料費の高騰で、新築住宅、リフォーム工事の工事価格が高くなり、お客様がお考えの予算内に収まらない事例がとても多くなっています。

土地価格の高騰も続いており、土地探しからをご希望のお客様にとっては、土地価格と建設価格のダブルパンチという厳しい状況が続いております。

現状を踏まえたうえで、今後の展望や予算が合わない場合の家づくりの進め方について解説していきますね。

家づくりの検討をストップされる方も

2023年の秋から2024年の1月までは、急激な価格上昇が続いていました。

そのため、家づくりを考えているお客様も検討を一時的にストップされていたようで、業界としては急激な問合せ数の落ち込みが話題となっていました。

実際にあすなろ建築工房のお問合せを頂く数も、1月までは例年に比べてとても少なくなっていました。
2月に入ってからは問い合わせが増えてきた感じがしています。
他の工務店仲間たちにも聞いてみたところ、一部の工務店さんでそのような兆候が見られるそうです。

先に書いた通り、家づくりをご検討されていたお客様は、急激な建設価格上昇に「この先もこんな感じで上がってしまうのか?」としばらく様子を見られていたのでしょう。

今後家づくりの予算で上昇するのは人件費

皆様がお感じになられているように、ウッドショックやウクライナショックのような急激な値上がりは既に終わっています。
現在は円安による「微増」という状態です。


ただ、「この先、工事費は下がるのか?」と言われると、戦争や自然災害などの有事の際を除いて「下がらない」と断言できます。

現在は「材料価格」だけに留まっていますが、今後は間違いなく「人件費」が上がってきます。大工さんや職人さんの手間賃です。

現在は、3年前とほとんど同じ感じですが、この手間賃が間違いなく上がってくると思います。

その理由は「人材不足」です。

国土交通省が出した「建設業を巡る現状と課題」にも説明されています。

建設業就業者の数は、この25年間で右肩下がりです。

そしてその内訳の1/4が60歳以上の高齢者になってしまっています。

一方で新規就労者の若者は1割しかいません。


特に大工などの特殊技能を持った職人は急激に少なくなり、この20年間で半減してしまいました。

これからの住宅業界は、有能な技術者の争奪戦となります。

となると、職人の賃金は上がることになります。

当然ながら建設価格にも上乗せされますので、住宅建設価格は上がることは避けられない状況です。

家づくりを先延ばししても状況は同じ


急激な建設価格高騰により、家づくりの様子を見ていらした方はこのところの状況を感じていらっしゃるでしょう。

「家づくりを先延ばししても、延ばした分だけ価格も上がる。賃貸で済ます訳にもいかないので、家づくりの検討を始めよう(再開しよう)」と、動き出したものと思われます。このところ、お客様がお考えになられる予算内に収まらない事例がとても多くなっています。

現在竣工しお住まいになっているお施主様も同じでした。

お施主様にも予算に合わせる苦労をしていただき、この度無事に完成に至った形となります。

土地の価格も予算以上、建設費も予算以上ということで、いろいろと頭を悩ませて、費用をコントロールして参りました。

何もかも価格が上がって行く時代の家づくりとなりますので「予算が合わない」のは、当然となります。

だからこそ「予算が合わない場合の家づくりの進め方」が大事となってきます。

ここを間違えてしまうと「希望の家」にはならない可能性が高くなるのです。

予算が合わないときの優先順位

予算が合わない場合の家づくりの進め方においては、優先順位をしっかりと持って進めて頂きたいです。

優先順位は大きく3つです。

①性能

②材料

③デザイン

優先順位①性能

第一に優先させてほしいのは「性能」です。

「性能」とは『耐震』『断熱』『高耐久』の3つになります。

出来上がってからでは変更できない部分であり、どれも欠かすことはできません。

耐震の重要性

『耐震』を犠牲にすれば、大きな地震に見舞われた際に、家族の命が危険にさらされるだけでなく、家に住み続けられなくなります。

大きな費用を要して補修をしなければならなくなったり、場合によってはまた新しく家を建てたりする必要が生じてしまう可能性もあります。

断熱の重要性

『断熱』を犠牲にすれば、「暑い」「寒い」に悩まされるだけでなく、光熱費つまりランニングコストに影響を受けます。

これだけ電気代、ガス代が高騰している時代なので、ランニングコストを考えると、たった10年で元が取れることにもなります。

また「暑い」「寒い」で悩むことになるお家に住んでいると、ご家族の健康にも影響が出てきます。

つまりは医療費にも繋がることです。

このあたりついては、また別のコラムでお伝えしたいと思います。

高耐久の重要性

『高耐久』を犠牲にすれば、10年後に訪れるメンテナンスの際に大きな出費を余儀なくされます。

電気代、ガス代と同じようにランニングコストに響くことになるのです。

50年、60年住み続けることを考えるならば、住んでいる間に必ずイニシャルコストの増加分をランニングコストの増加分が追い越すことになります。

優先順位②材料

第二に「材料」を優先して欲しいです。

「材料」とは自然素材を指します。新建材ではなく、無垢の材料のことです。

実際には、床の無垢フローリングや壁の漆喰、外壁や屋根の木、ガルバリウム鋼板などが無垢の材料に当たります。

「将来必ず手に入るもの、取り換え出来るもので造る」ことが重要なのです。

新建材で代表されるように、メーカーが作る材料を使っていると、そのメーカーが撤退したり、不採算で生産しなくなったりしてしまうと、メンテナンスの際に同じものが手に入らなくなってしまいます。

すると他の材料で代用することになるのですが、形が違ったり色が違ったり、うまく合わないことが多いです。

日本国内のメーカー生産品って驚くほどに規格がバラバラです。

この辺りはヨーロッパとまったく違います。

ヨーロッパ諸国はEUで統一された規格があり、メーカーが変わっても代用が効くことが多いのですが、残念ながら日本のメーカー品は代用が効かないことが本当に多いのです。

新建材と呼ばれる材料などで家を作ってしまっていると、将来必ずといっていいほど、取り換え品がなくて困ることになります。

取り換えが効かないため、壊れて汚れたままで我慢して使い続けるか、「全部取り換える」という無駄な費用がかかることになってしまうのです。

自然素材つまりは自然界にある無垢の材で造っていれば、何十年後であっても、交換が可能です。

山に生えている木を伐採して、乾燥・製材すれば、取り換えられるものが手に入ります。

漆喰も、石灰石を高温で焼けば手に入ります。

時代が変わっても産地が変わっても、同じものが手に入るのです。

日本にある最古の建築物である法隆寺も同じです。

ダメになった材料を取り換えることで、1400年以上も使い続けることができています。

優先順位③デザイン

第三に「デザイン」を優先して欲しいです。

逆に言えば、「デザイン」は優先順位が3番目です。

「デザイン」といっても「カッコ良い」「カッコ悪い」の話ではなく、「設計の工夫」という意味です。

「設計の工夫」次第で、建設コストを下げられるので、3番目にしています。

「一FUJI.二インコ.三ハウス」のお家も、設計の工夫をしています。

設計の工夫をすることでいろいろとVEをしています。

VEとは「Value Engineering」の略で、「機能を下げずにコストを下げる」手法のことです。

一般的にはコストダウンの意味でも使われていますが、本当の意味は違います。

むやみやたらコストダウンすると機能を下げてしまいますが、正しいVEは機能を下げずにコストを下げる手段を考えることです。

この数年間は「見積してみたら予算と合わない」ということが常態化していたこともあり、あすなろ建築工房のスタッフもこの「VE」のメニューを豊富に蓄積しています。

お施主様と一緒になって、私たちも汗をかきながら、予算に収める努力をしてきました。

この経験の蓄積は相当なものになっています。

家づくりの予算がオーバーするときの進め方・まとめ

予算が合わないからと諦めてローコストメーカーで建ててしまったり、建売住宅を購入してしまったりすると、実は生涯の支出では逆転してしまうことも。

結果としてランニングコストがかさんでしまい、ライフサイクルコストつまりは生涯支出で見てみたら、逆転増大してしまうのです。

目先の費用だけで判断してしまうと、後で痛い目に遭う可能性が高いと言えるでしょう。

将来の支出もしっかり計算に入れて、優先順位を間違えずに、諦めることなく「一緒に汗をかく」ことをしてみて欲しいと思います。


他の記事をみる